今日ご紹介するのは、先日TV放映していた、成島出監督の「孤高のメス」(2010年)である。現職の医師である大鐘稔彦の小説を映画化し、地方の病院に赴任した主人公の医師の活躍に臓器移植の問題を絡めて描いたヒューマンドラマだ。



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地方にあるさざなみ市民病院に第二外科部長として就任する有能な医師に堤真一。医療や患者に対する真摯な姿勢で周囲を変えていく堤と、触発されて彼を懸命にサポートしようとする看護師役の夏川結衣とのコンビが、まさにこの映画の主役。彼ら2人の好演がこの映画を見ごたえあるものにした。



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3年ほど前に助かる見込みのない命を大手術で救ってもらった私は、医療現場を舞台にしたドラマをこれまでにない感慨を持って見てしまう。ちょっと目をそむけたくなる開腹シーンなども、自分が患者の立場になって、執刀する医師がどんなに集中力を必要とし、人の命を救うことがどんなに重い仕事かを考えながら見てしまうわけで、改めて私の8時間に及ぶ手術の大変さを痛感しました。



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余貴美子の演技はいつもながら、という感もあるが、下手な役者にはできない重要な役どころであろう。



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吉沢悠、安藤玉恵など第二外科のスタッフのほか、院長には平田満。



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右端で横たわっている市長役の柄本明の、なんとなく田舎の市長をデフォルメしたような演技が映画を損なっているような気がした。その家族に、中越典子やでんでんなど。


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主演の2人と比べると、生瀬勝久のヤブ医師役は、単に卑怯・姑息な敵役というだけで、人間ドラマとしてはあまりにも描写が単純すぎる。しかもそういうキャラが似合う役者だけに、余計浮いた感じがしてならなかった。



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手術でマスクをしながらもも、目だけでさまざまな感情を表現する堤と夏川。このあたりは役者としての力が問われるところだろう。



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夏川の堤に対する尊敬の念は、彼女が仕事に情熱を燃やせば燃やすほど、恋として膨らんでいく。そのあたりが、主人公の2人が同じフレームに収まるシーンで巧みに表現されているのがいい。医療だけでなくさりげなく恋も描かれた作品である。音楽の使い方をはじめ、日本映画独特の悪癖というかセンスのなさというか、私が好きになれないところもあるのだけど、安っぽい感動を売りにした映画とは一線を画す出来栄えの作品に仕上がっている。



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