川崎での取材の帰り、いつも乗る東海道線をやめて、座れる京浜東北線に乗ったらすぐ眠りこけてしまい、気がついたら上野だった。で、今日の映画は「大いなる眠り」……と行きたいところだが、その前にチャンドラーの話。


トライ・ザ・ガール


今、こんな本を読んでいる。チャンドラーの短編集だ。仕事がピークでどんなに疲れていても、移動時間に本を開かないと落ち着かない私にとって、面白い本の定義とは、移動時間が短く感じられるものだったりもする。川崎に行ったついでに有隣堂書店に寄ったら、いくつかの書店で見当たらなかったマイミクの「しおん」さんお勧めのマイケル・ハーヴェイの「報いの街よ、暁に眠れ」がようやく見つかって購入。眼がショボショボしてても、面白い本ならば読みたい。


山本一力


ちなみに、いつもハードボイルドばかり読んでいるわけではない。先週読んでいたのはこの2冊。「だいこん」は書店でも平積みで目立つが、「銭売り賽蔵」も素晴らしい。大きな感動と元気をもらえます。山本一力を読んだことのない方には、この2冊をお勧めしたい。


さっきのチャンドラーの本、「トライ・ザ・ガール」に話を戻そう。たまたま短編集が3巻出ていて、これは第2集。標題のほか、「犬が好きだった男」、「金魚」など、1936年~1937年に発表された7篇が収録されている。この中の「カーテン」は長編「大いなる眠り」にも組み込まれたらしい。


大いなる眠り


というわけで、ようやく「大いなる眠り」の話。1978年の作品だが、日本では劇場公開されず、私はNHKで放映されたのを観た。70年代には、この映画のほかに、「ロング・グッドバイ」(1973年、ロバート・アルトマン監督)、「さらば愛しき女よ」(1975年、ディック・リチャーズ監督)のチャンドラー作品が撮られている。主人公の探偵マーロウ役は、「ロング・グッドバイ」ではエリオット・グールド、残る2つの作品はロバート・ミッチャムである。まったく雰囲気の異なるキャスティングだが、いずれもその俳優がうまく活かされた作風で、見応えがある。


さらば愛しき女よ


映画以上に素晴らしいのが、音楽である。「さらば愛しき女よ」の音楽はデヴィッド・シャイア。高校生のとき、FMでエアチェックしたものを聴くしか術がなく、30年後にCDで再会した。「大いなる眠り」のほうの音楽はジェリー・フィールディングである。今この音楽を聴きながら、これを書いてます。これはミクシイでフィールディング繋がりで知り合った方が、親切にも「The Big Sleep - Suite」を送ってくれたのである。冒頭、車が豪邸の敷地内に入っていくときのテーマ曲で、「あ、これ、フィールディングの音楽じゃん」と気づいたときのワクワク感を思い出すたびに、映画音楽って病みつきになるなぁと思う私である。



「大いなる仕事」が待っているので、サントラを聴きながら、頑張ろう。