2月10日に「健康経営のすすめ」と題するセミナーに参加してきました。
NPO法人健康経営研究会と日本予防医学協会が主催。
健康経営研究会は大阪ガスの統括産業医岡田邦夫先生が理事長を務められています。
日本予防医学協会は健保組合や企業を通じて集団検診等を提供されている財団です。
講演者も最初のお二人(産業医科大学和田攻学長、岡田先生)は、いかに産業医学が重要か、メタボ対策が重要かといった話が中心で、CSRの観点から健康経営がいかに重要かを力説されていました。
三人目の医療経済学の第一人者である慶應義塾大学の田中滋教授の講演で、
政策(政府・経営)にかかわる制度設計には
① 理念(ビジョン)
② 使命(ミッション)
③ 価値(ヴァリュー)
④ 中核概念(コアコンセプト)
⑤ 中核技術(コアテクノロジー)
⑥ 戦略(ストラテジー)
のいずれもが明確である必要があること。
この抽象概念を医療保険政策としての特定健診、特定保健指導に当てはめてみるとどうだろうか?
との投げかけがあり、会場の空気は一転したような気がします。
=医療保険政策としての特定健診・特定保健指導について=
現行の政策が医療費上昇抑制という対MOF・対経済財政諮問会議対応ではなかったか?戦略としてメタボ者(というより肥満者)への保健指導等だけに陥っていないか。
⇒元々、「健康」を考えての理念・使命構築をしていないのでは?だから戦略も、本質から外れる内容となっているのでは、と聴衆は考えたと思います。田中滋教授は「勉強会」を通じての様々な関係者間の議論、共通の認識を持つこと、人材の育成の重要性をお話されていました。
その後の議論は、健康経営という観点から経団連での調査報告、大手IT企業でのCSRを通じてでの取組み状況の紹介が続きましたが、かなり現実性のある内容となりました。
セミナーの一番のポイントは、田中滋教授の上記のフレームで健康経営や健康会計を考えるという点。
二番目は実際に企業で取り組む事例の紹介であったと思います。演者の気持をこちらに向けた田中滋教授のマジックにいつものことながら脱帽致しました。
具体的事例では、
① 岡田先生のご経験で、メンタルヘルス対策が企業内に根付き、実際に効果が出てくるまで、10年の時間が必要であったこと。
全管理職への徹底したメンタル不全者への対応研修
⇒ 1年後には休職者の休業日数が減り始める
(二次予防的効果、早期対応、適切対応による休職期間の減少)
それでも休職者数は増加
⇒ 休職者の増加が止まったのは活動開始から10年後
② ワールド健保組合の事例で、企業と連携しながら活動を行った結果、保険料率が半分に下がり、個人・企業の負担が減ったこと。
③ 経団連の調査で、大手企業の事例として、喫煙対策、メンタルヘルス対策が重視されていること
④ 日本ユニシスでのCSR的観点からの「健康経営」的な活動状況
・ワークライフバランス
⇒これは単なる時間のメリハリの話ではなく、社員の「納得・やる気」を高める為の一環と捉える
・新型インフルエンザ対策
季節インフルエンザワクチン接種。徒歩帰宅プログラム。全社員の所在確認。地域での役割・活動。
⇒ここまでやっている会社は聞いたことがありません。本当に秀逸です。
⑤ 過重労働がひとつの引き金となって脳出血を起こし、意識障害となった従業員の会社への安全配慮義務違反による賠償訴訟で企業に1億9800万円支払の地裁判決が下された事件も紹介されました。近い将来、企業の健康担当役員個人が訴訟の対象になったり、企業側から責任を問われたりするだろう、との由。
なるほどと思いながら、その先には、上記のようなケースでは、会社側が健康管理業務の統括を専門家として委託されている産業医が、企業から訴えられる時代が来ることを感じました。 やはり10年前の公認会計士と同じです。
最後には、和田先生もこれまでの豊富なご経験から、貴重なご意見を披露され、メタボは元々の体質等も影響し、いろいろやっても簡単には効果が出てこないといったお話に我々聴衆も改めて和田先生のご卓見に感じ入りました。
これらの先生方の、建前ではなく本音の議論は参加された皆さんに強いインパクトがあったのではないかと思います。
企業のストレス対策、メンタル対策を支援する私の立場としては、
① 健康経営、健康会計は就業者の健康、企業の繁栄、社会の安定に繋がるものであること
② 以前に比べ就業者の健康状態がある程度高まっている現況では、現実の企業、就業者のニーズはメンタル対策にあること
③ メンタル対策の効果がしっかりと出るまでには10年といった長い時間がかかること。
④ 人材の育成、お互いが議論し、共通の認識を持つ「勉強会」が重要であること。
「健康会計」「健康経営」 やはり現代の時代に非常に重要なコンセプトです。