4月は精神的な不調が増える時期と言われています。その為、新聞記事、雑誌記事、論文、TV番組にもその関連が増えてきます。また新刊でも何冊か、メンタルヘルス関連の本も出ました。これらについて私なりのレビューをします。
第1回目は、「医者にはうつ病は治せない」(上野怜氏 :文芸春秋2009年4月号306ページ~)
上野怜氏は知る人ぞ知るうつ病関連を非常に丁寧に取材し続けているジャーナリストです。私も日本EAP協会のご取材を頂いた際に一度お会いしたことがありますが、知識の深さ、状況の把握、問題の本質の捉え方はすばらしいものがあります。
その上野氏の最新記事です。
・現在の日本は「うつ大国」
・精神科医は本や、TV、新聞等で、「うつ病は半年から一年で治る」「うつ病は必ず治る」と断定している。
だが、なぜ雅子様や私は「治らない」のか?(本記事の中で、上野氏自身が11年来うつ病治療中であることを明らかににしてます)
と、問題提起。
・様々な医師や患者への取材から、製薬会社の学会、患者の家族会、医師への何らかの利益供与があると思われること
・うつ病には抗うつ薬が特効薬であるかのごとく話をする医師の言説には製薬会社の影がちらつく。
・現在は非定型うつや双極Ⅱ型、現代型うつが出てきており、うつ状態があるから、うつ病だと診断できなくなりつつある。
・ある精神科医の正直な話として、環境や経済状態など、様々な要因が全てうつ治療に好条件下であったとしても、うつ治療で完治するのは0.5%以下の確率であること
・医師が患者にうつは治らないというと、患者はそこで治療意志を失って通院をやめ、ますます悪くなり場合によっては自殺につながる可能性もあるので、医師は治るといわざるをえないと思っている
・うつ病は現代の生活習慣病であり、糖尿病と同じように、いかに付き合ってQOLを高めていくかがポイントであること
・その為には本人がしっかりと治療に参加しなければならない。
・現行の医師、特に内科では、簡単なチェックシートだけで、うつと診断され、多量の抗うつ薬が処方される。それは医師にもどの薬が効くか判断できないから、下手な鉄砲、数撃てば当たる式の処方が成り立っている
・患者にとって本当に誠実な医師だと思えるのは「長引くからこれからはうつと共に生きていく生活や考え方に転換しましょう」と示唆してくれる先生である。
・自分自身、これからは医師に依存するのではなく、自分でうつは治す、という気持を持って臨む。
と締めくくっています。
この記事のポイントは、患者が自分の症状と病気をしっかりと正確に把握することの必要性を明示した点です。
これは、改めてレビューは書こうと思っている加山リカ氏が最新著「雅子さまと新型うつ」で、精神科医としてのご自身の経験を基に論旨を展開している。「上司や会社のせいで私はうつ病になった。気分転換にカナダに行く」と言って本当に行ってしまう患者に対し、一人の働く人間としては、「それはあなた自身がおかしい。あなたの側に問題があるんじゃないか。」と言いたいけれど、それを言えず、主治医として患者の考え方を「支持」しなければならないと考える姿が描かれています。患者はメディアで喧伝される大うつ病のイメージを持ち、それに沿った対応だけを続けたがる、これではいつまでも回復が見られないのは当然です。
まさしくインフォームドコンセントです。医師の「私にはわかりません。」の一言も含めて。
そうしなければ、本人だけでなく、周囲も非常に苦労します。職場だけでなく、友人、家族とも大きな亀裂を起こしかねません。
診断できるのは、医師のみ。先生方の勇気が一番大事なのです。
上野氏の記事にはそこまで考えさせられました。
ご自身の患者としての立場の記事ながら、感情に引っ張られずに堂々と議論を進めている内容は、すばらしいとしか言葉がありません。ぜひ皆さんに一読をお勧めします。