小豆雑煮 / 膝餅神事と国忍別命@出雲地方のお雑煮 |   + Mother Lake +

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 あけましておめでとうございます。本年もどうぞごひいきによろしくおねがいします。

 さて、思いがけず大雪の新年となりました滋賀県地方、今朝の比叡山です。

 目の前は一面の銀世界、まるで一幅の墨絵のような景色が広がっております。


 さてさてお正月は恒例の小豆雑煮のお話です。わが家のお雑煮はこちら小豆雑煮です。

 初めての方は...え??これがお雑煮??と思われるかもしれませんな。いや思います!!笑

 これってぜんざいそのもの....はい、ぜんざいの発祥の地は出雲地方です。

 住まいは滋賀県ですが、出雲の末裔であることを誇りに...京都出身の嫁の白味噌雑煮なんて許しません。


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 そんな出雲地方(旧出雲国=島根県東部)のお雑煮については過去記事もご覧ください。ぜんざい からリンクしてます。

 しかし、毎年飽きもせず...。爆 


 ぜんざい 小豆雑煮とぜんざい発祥の地@出雲地方のお雑煮

 ぜんざい 小豆雑煮と方結神社の膝餅神事@出雲地方のお雑煮

 ぜんざい 小豆雑煮@出雲地方のお雑煮とお雑煮文化圏

 ぜんざい 謹賀新年@元旦のお雑煮 


 小豆雑煮に関する考察もネタが尽きそうですが...ゴホゴホ。年末の膝餅神事に遡ってみましょう。

 12月26日、私のふるさと松江市郊外の美保関町片江では子どもたちが膝で餅をつく膝餅神事の日。
 片江では祭りを司る家々を頭屋(とうや)と呼び、その取りまとめ役の家を親頭(おやとう)と呼びます。
 親当および頭屋は毎朝七浦(七つの入り江)の汐を汲み身を清めるのが慣わしで、私が6歳のときに頭屋にあたっていました。


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 膝餅神事に参加できるのは頭屋の長男と決められていて女子は参加できないという決まりがあります。
 1974年の年末に私は膝餅神事を経験しましたが、ちょうどNHKと地元紙の取材が来ていました。
 NHKのニュースでは「最年少のNくん(←私のこと)は恥ずかしいのかあっという間につき終わりました。」のナレーションつき。爆

 膝餅とは蒸した3升のもち米に茹でた1升の小豆を混ぜ、「ござ」に包んでその上からかわるがわる膝でつきます。
 ちょうど爪先立ちで正座をするような格好ですな。


 餅がつきあがると子どもたちはひと足早いお年玉をもらい蜘蛛の子を散らすように外へ飛び出していきます。
 つきあがった餅は十二支をかたどった12個の餅に丸められ、方結神社の神前へ。
 その後正月5日に切り分けられて各戸に下げられる。それを食べれば今年も無病息災というわけ。


 膝餅神事の発祥は方結神社の祭神国忍別命(クニオシワケノミコト)に関連します。
 そう「この地は、国形宜し。故に方結(かたえ)という。」のあの国忍別命、素戔男尊の子神にあたります。
 方結の地にたどり着いた国忍別命は神々に供える餅を所望したものの、すでに餅つき道具を片付けた後。
 臼と杵で餅をつく代わりに膝で餅をついた...これが神事の由来とされます。


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 さて、国忍別命は何しに方結に来たのでしょう??
 八岐大蛇神話にもあるように国忍別命の父素戔男尊は高天原から下った後、山間の奥出雲を本拠とします。
 素戔男尊歩いていると川の上流から箸や茶碗が流れてきた..とありますので以前から人が住んでいたようです。

 素戔男尊はたぶん渡来人なのではないでしょうか??


 八岐大蛇を退治したときにその体内から出てきたのは草薙の剣。
 皇室の三種の神器のひとつにも数えられる草薙の剣は鉄文化の象徴。
 八岐大蛇は氾濫を繰り返す奥出雲を源流とする斐伊川になぞらえたものと考えられます。


 斐伊川氾濫の原因は??現在唯一現存する古代たたら製鉄はこの奥出雲にあります。このたたら製鉄が関連します。
 たたら製鉄は砂鉄と大量の木炭から鋼を作る技術、大量の木炭はすなわち大量の樹木を必要とします。
 樹木の伐採により保水力が弱まった斐伊川源流域で頻繁に氾濫が起こったのは想像に難くなく...
 ともあれ素戔男尊の治める奥出雲は鉄の王国だったのは疑いの余地はありませんな。


 ところで片江は海岸沿いの集落ですが、国忍別命をはじめとする素戔男尊の子神達はいずれも海沿いの集落に祀られています。

 都留支日子命(ツルギヒコノミコト) : 嶋根郡山口郷

 衝桙等乎而留比古命(ツキホコトオルヒコノミコト) : 秋鹿郡多太郷

 磐坂日子命(イワサカヒコノミコト) : 秋鹿郡恵曇郷

 片江(方結郷)を含めこれらはすべて島根半島の海岸近くの地名です。


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 山間の奥出雲を本拠とする素戔男尊の子神たちがいずれも島根半島の海岸部に祀られています。

 これは鉄の文化を持つ奥出雲の人々が海岸部の海洋民族を征服していく過程をあらわしたものとされています。

 都留支日子命と衝桙等乎而留比古命なんて名前からして鉄そのものですな。しかも鉄製の武器です。


 方結の人々は征服されるとも知らずに国忍別命に膝餅を???

 しかしあれですな、鉄器を操る奥出雲の勢力が、木製の臼や杵に事欠くなんて。笑

 ちなみに国忍別命に膝で餅をついてもてなした「大下手」という屋号の家は今も現存しております。

 片江には小豆雑煮の発祥よりも以前から小豆を使った年越し行事が...出雲の神々は八代末裔の大国主の頃の話ですからね。


 そんなややこしいことをを考えながら今年も謹んで小豆雑煮をいただきます。

 あ、来年はお雑煮用のお椀を新しくせねば...縁がはげていて写真うつりが非常に気になりますな。笑

 今年もこんなマニアックな感じでやっていきますが...懲りずにおつきあいくださいね。大汗