飲食のスタイルが特許に | 知財を活用した「知財ポジショニング戦略」 徹底解説!

知財を活用した「知財ポジショニング戦略」 徹底解説!

仕組みやモノのアイデア権利化コンサルタント・弁理士 遠藤 和光

いきなり!ステーキが話題になっていますね!

 

 

いきなりステーキ」は株式会社ペッパーフードサービス

商標登録(第5663544号)です。

ネーミングもいいですね♪

 

(画像はいきなり!ステーキのホームページから)

 

 

 

 

立ち食いで自分の好きな量を注文できるという

飲食のスタイルを特許にしました。

このような特許をビジネスモデル特許といいます。

 

 

2013年12月5日に1号店を銀座にオープンさせた後、

最近だと2018年10月23日に337号店の「ゆめタウン久留米店」を

オープンさせています。

 

 

特許の内容を見てましょう!

 

出願当初(特開2015-228949号)の内容は次のようになっていました。

 

「【請求項1】
お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと、

お客様からステーキの量を伺うステップと、

伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと、

カットした肉を焼くステップと、

焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップと

を含むことを特徴とする、ステーキの提供方法。」

 

 

店員がお客をテーブルに案内してステーキの量を聞き、

料理人が肉をカットして焼き、

店員が肉をテーブルに運ぶ

という方法の発明になっています。

 

 

ビジネスモデル特許を方法で表現すると、

発明ではないという発明該当性違反

になりやすいんですよね~

 

 

審査官から発明該当性違反の拒絶理由が通知されたため、

補正を1回行って特許(特許第5946491号)になりました。

 

その特許の内容は次のとおりです。

「【請求項1】
お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと、

お客様からステーキの量を伺うステップと、

伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと、

カットした肉を焼くステップと、

焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップとを含む

ステーキの提供方法を実施するステーキの提供システムであって、

上記お客様を案内したテーブル番号が記載されたと、

上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量する計量機と、

上記お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印しとを

備えることを特徴とする、ステーキの提供システム。」

(下線部が補正により追加された箇所)

 

 

テーブル番号が記載されたと、計量機と、肉を区別する印し

3つの物を追加して方法の発明物の発明に変更しました。

 

 

 

しかし、特許庁が行った特許に対して第三者から異議申立

(異議2016-701090)がなされ、

特許が取り消されました。

 

 

特許って取り消し(無効)になるんだと驚かれる方もいると思いますが、

そうなんです。

 

 

異議申立による審判官が出した異議決定の内容を

知りたい方は以下をご覧ください。

異議決定の内容

 

 

異議申立がされた際、権利者には訂正が認められています。

訂正することにより特許が維持される場合があるからです。

訂正の内容は次のとおりです。

 

「お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと、

お客様からステーキの量を伺うステップと、

伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと、

カットした肉を焼くステップと、

焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップと

を含むステーキの提供方法を実施するステーキの提供システムであって、

上記お客様を案内したテーブル番号が記載されたと、

上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量する計量機と、

上記お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印しとを備え

上記計量機が計量した肉の量と上記札に記載されたテーブル番号を記載したシールを出力することと、

上記印しが上記計量機が出力した肉の量とテーブル番号が記載されたシールであること

を特徴とする、ステーキの提供システム。」

(下線部が訂正により追加された箇所)

 

 

上の図のSがシールです。

テーブル番号(22番)と肉の量(362g)が

記載されています。

 

訂正前は計量機と札との関係が明確になっていませんでしたが、

訂正により両者の関係が明確になりました。

 

 

 

異議の決定を要約しますと、

ステーキの提供システムは、札、計量機、印し、シールという物を構成とするものである。

これらの物は、それぞれの物が持っている本来の機能の一つの利用態様が示されているのみである。

本件特許発明1の技術的意義が経済活動それ自体に向けられたものであることに鑑みれば、

社会的な「仕組み」(社会システム)を特定しているものに過ぎない。

本件特許発明1は、その本質が、経済活動それ自体に向けられたものであり、

全体として「自然法則を利用した技術思想の創作」に該当しない。

したがって、本件特許発明1は、特許法第2条第1項に規定する「発明」に該当しない。

 

 

しかし、平成30年10月17日に言い渡された

知財高裁の判決(平成29年(行ケ)第10232号)

では特許庁の異議決定が取り消され、

特許が維持されました。

 

 

判決文の詳細を知りたい方は

以下をご覧ください。

判決文

 

 

判決文を抜粋しますと、

「本件特許発明1の技術的課題、その課題を解決するための技術的手段の構成

及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らすと、

本件特許発明1は、札、計量機及びシール(印し)という特定の物品又は機器(本件計量機等)を、

他のお客様の肉との混同を防止して本件特許発明1の課題を解決するための技術的手段とするものであり、

全体として「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するということができる。
したがって、本件特許発明1は、特許法2条1項所定の「発明」に該当するということができる。」
 

 

特許請求の範囲に人の行為が含まれていても、

課題を解決するための特定の物を構成要素に含めることにより

特許になり得るということだと思います。

 

 

なお、異議申立およびそれに対する知財高裁の判決は

発明該当性のみについて争われたものですので、

進歩性について争われておらず、

今後無効審判で争われる可能性は残っています。

 

 

 

 

※追伸

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