高校2年生の生活は、M崎君とのテスト結果の見せ合い以外、特に刺激はなかった。
ただ、2学期になって、母が手術のため、1週間ほど入院し、家を留守にした。
何の手術だったかまでは聞いていないが、軽い手術だから心配するなとだけ言われた。
手術は、伯母が勤めている嬉野の病院で受けるとのことだった。
家事の手伝いなど全くしていなかったので、シンジに出来ることはなく、
母は心配だったろうと思う。
母は食費として5千円置いていった。
昼は学校でパンを買って食べた。
朝は食べずに、晩は、平天とか竹輪などとパンを買って食べた。
ご飯は炊かなかった。炊き方が分からなかった。
炭鉱閉山で寂れた街なので、駅前や近所にも、ラーメン屋さえなかった。
電子レンジなど、まだ世の中に無かったが、シンジの家には冷蔵庫も無かった。
毎日、平天とか竹輪とかを食べたので、腹を下すようになった。
学校でも授業中にトイレに行った。
4~5日したら、祖母が世話しに来てくれたが、
洗濯機も無くて申し訳ないので、下着は風呂場で自分で洗った。
洗濯板で洗ったので両手の指の第2関節の皮が破れた。
この時に、母の大変さに気づけばよかったのだが、
根っからの甘えん坊で自己中で、人を思いやれないシンジは、
母が退院して来たら、もうすっかり、母の家事の大変さを忘れてしまった。
ただもらった5千円から使わず残ったお金は母に返した・・