因数分解の克服に取り組んだお陰で、
シンジは自分なりに勉強の仕方のコツが分かった。
以後、苦手な数学と英語は毎日予習することにし、
他の科目は定期テスト前に試験範囲を復習した。
単語カードを作って英単語を覚えるように、
現代国語、古文、歴史なども、出だし(表)と続き(裏)のカードを作った。
定期テストの前は、各科目のカードを作るのがテスト勉強の基本になり、
登下校の通学列車の中で、それを覚え込んだ。
物理や化学は教科書を丸暗記したが、手が回らないで無策で受けた科目もあった。
9月からの第二学期では、各科目総合で、クラスではトップ、学年では5位になった。
だが、大学進学の支援を言ってくれていた次兄が仕事を辞め無職となり、
大学進学は立ち消えとなったので、シンジのやる気も続かなかった。
シンジは、1年3学期以降は、必死には勉強せず、
就職に困らない程度の学力維持でいいや、となったのだった。
数学は、1学期には60点だったが、2学期には93点となって、
あの頃のシンジの努力が記録されている。
3学期には3者面談が行われ、担任の田中先生は、シンジに勉強方法を質問された。
塾も無いような郡部からの僻地通学者の成績向上に驚かれていたのだろうと思う。
塾も、もちろん家庭教師も無く、シンジは、ただ予習復習をやっていますと答えたが、
先生は、それだけ?と、分からないというような顔をされていた。