燐寸は夢を見ていた。
酒屋や飲み屋で注文を取っている夢だ。
場所は小倉の砂津の辺りのようだった。
店の主人が「なぜ燐寸がいいのかね」と聞いてきた。
店の宣伝が出来るからですよ、と、燐寸は答えた。
主人: 宣伝するためにどうするのかね?
燐寸: 燐寸の表紙に店の名前と住所、電話番号を書き入れるのですよ。
それを、お客さんに無償で配るのです。
燐寸: 配ると言っても、いちいち旦那さんがお客さんに配る必要はありません。
灰皿の横に置いておけばいいのです。
お客さんが勝手に自分で取りますよ。
主人: 煎餅や蒲鉾の袋に書いておくのはどうかね?
燐寸: 煎餅や蒲鉾は嵩張りますし、賞味期限もありますので、その取換えが大変です。
また逆に、食卓の上に重ねていたら好きなだけ持って行かれますし、
酒のツマミが売れなくなりますよ。
主人: なるほど。では、この絵柄でお願いしよう。
店の主人は、青い柄を選び、試しに百個作ってくれ、と注文をくれた。
「毎度ありい~」と燐寸はお礼を言って、店を後にした。
そして、関門海峡を見下ろしながら小倉の空を飛び、大手町の燐寸工場に降り立った。
そこで燐寸は目を覚ました。
夢だったか・・ 懐かしい頃の夢をみたなあ。
あの頃は、次々と店の宣伝燐寸の注文が取れたもんだった・・・