アルコールの摂取が男性の生殖機能に影響を与える | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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アルコール摂取と男性の生殖機能との関連性を明らかにされており、男性のアルコール摂取に対して参考になる論文のため以下要点を紹介します。

 

この研究ではアルコール摂取が男性の生殖機能に及ぼす影響を、精液パラメータ、精液中の抗酸化物質、精子DNAの断片化、性ホルモン(FSH,LHなど)の調査をしています。

 

アルコール摂取が男性生殖機能に及ぼす影響に関する研究をデータベースで検索しました。

 

世界中の5大陸における23,258人を対象とし、男性生殖健康におけるアルコール摂取の影響を調査したデータベースから40の研究が選ばれました。

メタ解析の結果、アルコール摂取は精液量を減少させました

(SMD = −0.51;95% CI −0.77, −0.25)。

精液濃度、運動率、正常および異常な精子数などの他の精液指標とは有意な関連性はありませんでした。

アルコール摂取は精液中の抗酸化酵素を低下させました(SMD = −7.93;95% CI −12.59, −3.28)が、精子DNAの断片化には影響を与えませんでした。

総テストステロンレベルの低下(SMD = −1.60;95% CI −2.05, −1.15)、卵胞刺激ホルモン(SMD = −0.47;95% CI −0.88, −0.05)、黄体形成ホルモン(SMD = −1.35;95% CI −1.86, −0.83)の低下を示しましたが、他の性ホルモンであるエストラジオール、インヒビンB、性ホルモン結合グロブリンには影響を与えませんでした。

 

サブグループを分析した結果、中等度のアルコール摂取者(週に7単位未満)は精液指標に変化はなかったものの、重度のアルコール依存症者(週に7単位以上)は精液および性ホルモンに悪影響を及ぼし、特にエストラジオールが増加しました。

 

結論:アルコール摂取は精液量と抗酸化物質、生殖ホルモンに影響を与え、男性生殖機能にネガティブな影響を及ぼすと言えます。

 

この論文の結論

アルコールの摂取により男性の生殖機能に影響を与える可能性があることを示しています。具体的には、アルコール摂取が精液量を減少させ、精液中の抗酸化物質や一部の性ホルモンにも影響を与えることが示されました。ただし、他の精液パラメータや精子のDNA断片化には影響がないようです。

また、アルコールの影響は摂取量によって異なり、中等度のアルコール摂取者には影響が少ない一方、重度のアルコール依存症者にはより大きな影響があることも示されました。

男性のアルコール摂取に関する注意が必要であることを示唆しており、アルコール摂取の量と男性の生殖機能に対する影響を考慮する重要性を強調しています。

 

この論文から言えること

適度なアルコール摂取が男性の生殖機能に対して比較的少ない影響を持つ可能性がある一方で、重度のアルコール摂取が精液量や一部の性ホルモンに悪い影響を及ぼす可能性が高いと言えます。

 

Heliyon 9 (2023) e15723

Investigating the association between alcohol intake and male reproductive function: A current meta-analysis