サウナ暴露が精子に一時的に悪い影響を与える | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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精巣や精子は高温に対して過敏であり、高温は精子生成に大きな影響を与えることがいくつかの研究で示されています。サウナはまさに睾丸が温められるため精子に対してどの様な影響を与えるか気になるところです。イタリアからの報告です。

 

10人の被験者がフィンランド式のサウナに3ヶ月間、週に2回サウナに入りました(15分間、80–90°C)。

性ホルモン、精子のパラメータ、精子の染色体、精子のアポトーシス、そして熱ストレスと低酸素に関与する遺伝子の発現がサウナを始める前(T0)、サウナ終了後の3ヶ月後(T1)、およびサウナを中止してから3ヶ月後(T2)およびサウナ中止6ヶ月後(T3)において調べられました。

 

結果としてサウナにより精子数と運動率に強い悪い影響が見られました(P < 0.001)。

性ホルモンには有意な変化はありませんでした。正常なヒストン、プロタミン置換の精子の割合(78.7%から69.0%に減少)、染色体凝縮の割合(70.7%から63.6%に減少)、およびミトコンドリアの機能(76.8%から54.0%に減少)もT1で明らかに減少し(直後に機能低下)、熱ストレスと低酸素応答に関与する遺伝子の強力な上昇が見られました。これらの効果はT3で完全に回復しました。

 

正常な精子を持つ男性において、サウナに入ることが精子の生成に大きな影響を与えることを初めて示しました。ただこれは可逆的な変化です。

精子のパラメータ、ミトコンドリア機能、精子DNAの変化が含まれます。フィンランドや他の北欧地域でサウナが広く使用されており、このサウナというライフスタイルが男性の生殖機能に与える影響を考慮する必要があります。

 

この論文の結論

サウナ暴露が精子に一時的な影響を与えることを示しており、その影響はサウナを中止することで元に戻せることを示唆しています。

 

この論文から言えること

サウナがストレス解消やコミニュケーションのために近年とても人気です。ただこの様な根拠が出ている限りやはり妊活中サウナはやめるべき(もしくは少なくする方が良い)と言えます。

Human Reproduction, Vol.28, No.4 pp. 877–885, 2013

Seminal and molecular evidence that sauna exposure affects human spermatogenesis