移植周期に子宮内膜が12ミリ以上と厚いと妊娠中に妊娠高血圧症候群が増加する 今月号の論文から | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

凍結胚移植の際の子宮内膜が薄いと妊娠率が低下することは広く知られており7ミリ以上を目指す医師が多いところです。内膜が薄い場合にはその他にも低出生体重になることも知られています。

その一方内膜が厚い場合には前置胎盤のリスクが増えることも示されています。

内膜と着床と胎盤の形成には深い関係があり良い内膜を作ることがその後の周産期、出産時のリスクを減らすことには必須となります。

今月発表されたこの論文では内膜の厚さと周産期の合併症を調べており興味深い結果が出ていますので以下紹介します。

内膜<7mm は除外しています。

4グループに分けています。

グループⅠ:7−8ミリ

グループⅡ:8.1–10 mm

グループⅢ:10.1–12 mm

グループⅣ:>12 mm

結果ですが妊娠高血圧症候群のリスクは他のグループとグループⅣを比較すると、グループIVで大幅に上昇しました (グループI~IVでそれぞれ 5.7% 対 4.1% 対 5.7% 対 9.7%)。

 

またグループ I は帝王切開の発生率が高かったのに対し、グループIとグループIVは両方とも前置胎盤の発症率上昇を示しました。

交絡因子で補正後、グループIVは、他のグループと比較して、妊娠高血圧症候群リスクの有意に増加しました(補正オッズ比 [OR]  2.03、95%  [CI] 1.13 ~ 3.67)。 

 

この結果から言えること

この研究では、HRT周期での子宮内膜は周産期の予後に注目すべき相関関係を表しました。

厚い子宮内膜 (EMT>12mm)は妊娠高血圧症候群発症リスクの増加を認めましたが、そのリスクを軽減するための最適な 内膜の厚さは約9~10mmでした。 

妊娠後の母子の予後をよくする為に内膜の厚さを意識することの重要性が改めて認識されます。

生殖医療専門医はこれらのエビデンスを熟知し、「内膜は厚い方が良い」、「妊娠したら良い」のではなく、「母子に対して負担を与えない環境、妊娠継続、そして安全な出産」を目指すべき正しい生殖医療を行うべきと言えます。

Thick endometrium is associated with hypertensive disorders of pregnancy in programmed frozen-thawed embryo transfers: a retrospective analysis of 2,275 singleton deliveries