移植日の子宮内膜が7ミリ以下だと移植を中止する施設がとても多いと思います。しかし本当にそれは正しいか、統計的にはどうなのかを調べている論文が今月号のFSにありましたので以下紹介します。
この論文では959個の染色体正常胚を移植して出産率を調べています。
結果は以下のグラフの様になりました。一番上が全体の結果、中央がホルモン補充周期、下が自然周期です。そして赤が生まれた割合で白が生まれない割合です。
AUCはそれぞれにおいて0.55, 0.54, 0.54となりどの群でも内膜が4ミリから12ミリの間で臨床成績に統計的には差が出ていないとのことです。
この下の表は具体的なデータです。内膜が4−6、6−8。8−10、12以上で臨床成績を調べています。驚くことに正常胚を移植すると内膜が4ミリから6ミリの間でも出産率は48.5%になっています。
6−8ミリの46%や8−10ミリの45.7%という成績と比較して変わりありません。
この下の表は内膜の薄さ、胚盤胞のグレードや日数で変化をさせて成績を調べています。さすがにグレードが良い胚だと成績が良いものの他は有意さが出ていません。
論文の結論
今回の研究では子宮内膜が何ミリ以下だと成績が低下するなどの明らかな結論は得られませんでした。よくある移植日の子宮7ミリ以下だと移植をキャンセルすることは正当化されませんでした。内膜が7ミリ以下だと自動的にキャンセルすることは根拠がないことであり患者のストレスを増強させ経済的負担を高めることになる可能性があることであり、今後の更なる検討必要です。
この結果から言えること
子宮内膜が厚かろうが薄かろうが臨床成績は関係ないとしています。ただそうは言っても内膜が薄い場合には移植を中止するのが一般的だと思います。当院でもそうしています。
ただこの様な結果をこの分野の一番権威がある雑誌に載せてくることはかなり衝撃的と言えます。
この後の更なる検討が必要としていますので追試を待ちたいと思います。
Fertility and Sterility® Vol. 120, No. 1, July 2023
Effect of the endometrial thickness on the live birth rate: insights from 959 single euploid frozen embryo transfers without a cutoff for thickness