移植方法には自然周期とホルモン補充周期の二つの方法があります。自然周期の方が成績が良いことや分娩の際の出血が減ること、そして生まれてくる子供に対しても予後が良い事から、ここ数年当院では9割の方が自然周期での移植としています。
この論文ではホルモン補充周期において予想外の卵胞発育がある場合で、その後排卵が起き移植を続行した場合の成績と、妊娠中の合併症の有無、そして生まれる子供への影響について調べています。一番新しい6月号の論文からです。
結果として妊娠関連の臨床成績は特に変わりがなしとしています。
ただ興味深いのは妊娠高血圧症が排卵したグループで有意に減少しています。(1.6% vs. 15.3%).
また週数よりも大きい子供の割合が増えていいます。
ホルモン補充周期で予想外の卵胞があり排卵した場合には移植をキャンセルしましょうと説明している先生は少なからずいると思います。私自身も数年前まではその様に考えていました。
この論文のポイントはホルモン補充周期で排卵が起きて移植を続けると排卵された黄体から分泌される様々な物質が胎盤の形成やその後の胎児の発育などに良い影響をもたらすとしています。
逆転の発想というか、むしろ筆者の結論ありきの結論のような印象も受けますが、ホルモン補充周期で排卵しそうな場合に移植をキャンセルすることは慎むべきであり、しっかりと排卵時期を確定させ、むしろ「妊娠率が高くなり、母子ともに好ましい結果になるので続行しましょう」と医師から伝えることが根拠に基づく医療でありその説明が求められるといえます。
Fertility and Sterility® Vol. 119, No. 6, June 2023
The effects of unexpected follicular growth and ovulation in artificial cycles: a retrospective cohort study of frozen, single-blastocyst transfer