顕微授精は本来は男性因子の場合にのみ使われる技術 | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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現在顕微授精は世界中で広く行われています。

顕微授精は本来は男性因子の場合にのみ使われる技術ですが、高齢だからとか、卵子の数が少ないとか、結果が出ない方へも用いられています。また卵子の殻が硬いから、と言う根拠が無い理由でも使われています。

精液所見に問題が無いにもかかわらず顕微授精を選ぶ事は妊娠率を下げるため明らかに良くない方法です。

それにもかかわらず世界中で過剰な顕微授精が行われています。

顕微授精の割合ですが、ヨーロッパでは65%に、アメリカでは76%と報告されています。日本でも顕微受精の方が多くなっております。

受精率で見ると顕微授精の方が高くなることは証明されていますが、妊娠率や出産率を見ると明らかに逆転してきます。

 

そこで体外受精と顕微授精のどちらがどのくらい妊娠しやすいかをですが、日本での2014年の新鮮胚移植での妊娠率の成績を見ると以下のようになっており体外受精のほうが妊娠率が高くなっています。

体外受精  23.0%、顕微授精  18.9%

 

高齢の場合どのような結果になるかを調べた論文がHuman Reproductionにありましたので以下に紹介します。

 

年齢は40–43歳としています。男性因子は含まれていません。2012年から2015年までの期間で調べています。745名の女性の490名に顕微授精を、255名に体外受精を行っています。全ての男性の精子濃度などはWHOの基準からみて正常であるものでした。

 

以下体外受精と顕微受精での成績です。

受精率 (64 vs. 67%)

受精の数 (4.48 vs. 3.66, P = 0.001)

胚盤胞移植をした割合 (36 vs. 26%, P = 0.005)

凍結できた周期の割合 (26.4 vs. 19.7%, P = 0.048)

生児出産率 (11.9 vs. 9.6%)

 

この結果から、40歳以上の高齢の場合で男性因子がない場合、顕微受精が体外受精よりも優れているということにはならないということになります。

 

The role of intracytoplasmic sperm injection in non-male factor infertility in advanced maternal age

Hum Reprod (2017) 32 (1): 119-124.


高齢で受精するか心配だから顕微授精を行うと言う治療方法は好ましく無いと言えます。