凍結胚を移植する場合ホルモン補充周期より自然周期の方が好ましいという内容の論文です。
凍結胚を移植する場合、自然の排卵を利用して排卵後に移植を行う自然周期と、ホルモン剤を用いて排卵を抑制しコントロールしながら移植するホルモン補充周期があります。
数年前まではどちらで移植してもさほど変わりないと考えられていました。
しかしここ数年で実はそうではなく自然周期の方が周産期の合併症が減り成績も良くなるという結果が相次いて報告されています。
この論文も同様の内容です。
この下のグラフは凍結胚の移植の仕方ですがホルモン補充療法HRTがかなりの割合を占めているのがわかります。
この下の表が結果になります。
ホルモン補充だと妊娠高血圧症や分娩後の出血、帝王切開など増加する事がわかります。その他にも様々な違いが出ています。
結論として
この研究から凍結胚を移植するときにホルモン補充周期で戻すと周産期の予後に悪い影響を与えることがわかりました。そのためもし可能なら内膜を調整する方法としては排卵させ黄体を作り移植する移植方法を選ぶべきと言えます。
この結果から言えることとして
凍結胚移植を行う場合には可能な限り排卵させて黄体を作り黄体ホルモンだけでなくそれ以外のリラキシン、血管新生物質を出させる事が重要なポイントとなります。このような因子はホルモン補充周期では決して作ることができません。
もしホルモン値が不安、内膜が薄くて不安という場合には排卵後にエストラーナと黄体ホルモンの膣座薬を補えばダブルで補充がされるので好ましくなります。
当院ではホルモン補充に対して数ヶ月前から黄体ホルモンは膣座薬のみではなく内服薬か注射を加えてダブルで補充するようにしています。
妊娠すれば良いという時代は終わりを告げていて、周産期の予後を高めるために自然の良いところを上手く取り入れる事が大切と言えます。
Fertility and Sterility® Vol. 115, No. 4, April 2021
Adverse obstetric and perinatal outcomes in 1,136 singleton pregnancies conceived after programmed frozen embryo transfer (FET) compared with natural cycle FET