人工授精の成功率を左右する調整後の運動している精子濃度 | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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人工授精の成功率に左右するのは調整後の運動している精子濃度という論文です。
今月号のFertil&Sterilに掲載されていました。
人工授精の当日に精子の濃度がどのくらいあると妊娠するか、これはかなり気になるところです。
 
調整後の運動精子濃度が900万を超えている場合の妊娠率が一番高いことがわかります。
数が低下するにつれて妊娠率が低下しています。
ただ25万未満でも4.18%妊娠しており決して低くない数字だと言えます。
 
このグラフは年齢、BMI、刺激の方法、回数による違いが妊娠率にどう影響するかを調べています。
年齢が若い方が妊娠します。
FSH刺激の方が妊娠します。
 
 
この結果から言えることとして
人工授精の場合精子を調整後その数が多い方が妊娠率が高いことがわかります。
これはある意味当然の結果と言えます。ただ25万未満というかなり数が低くても妊娠しており諦めなくても良いのかとも言えます。
医師からすると、どのくらいの濃度で今回の人工授精を勧めないかと言う一つの判断になる良い論文だと言えます。
この様なエビデンスを元にして施設により調整後の運動している精子の数が何百万未満だと行わないということを決める指標にすると良いのかと思われます。
 
Fertility and Sterility® Vol. 115, No. 6, June 2021 
Clarifying the relationship between total motile sperm counts and intrauterine insemination pregnancy rates