採卵後は翌月に移植を | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。



採卵して全胚凍結してその後すぐの生理から移植するのと、一月開けてから移植するのとどちらが妊娠するか?と言う内容の論文です。
直後に移植すると卵巣が腫れてるからとかホルモンバランスが崩れてるからとかの理由であえて一月開けることも有りますが実際にはどうなのか気になります。

この論文では以下のように、Aの直ぐに移植する群と、Bの様に敢えて一月開ける群の二群に分けて後方視的に検討しています。


両群において背景に大きな差は有りません。

2群間での成績ですが、1番下の妊娠率は直ぐに移植した方が有意に高くなっています。(52.9 % vs 41.6%)

この表は色々な要因で妊娠率のオッズ比がどう変わるかを見ています。1番下のところで休まずに移植する方を1とすると遅延して移植すると妊娠率のオッズ比は0.63と低下する事が分かります。

このグラフは濃紺がすぐに移植する群、灰色が開けて移植する群ですが、治療しているセンター(treatment center)や、様々な凍結の理由(OHSS,Pの値,内膜の厚さ,希望)で区別してもどのグループでも直ぐに移植する群が妊娠率が高い事が分かります。

この結論から言えることとして
採卵して一度全ての胚を凍結してその後の生理が来たら移植をするケースが多く有ります。
この場合問題はどのタイミングで移植するかです。

「翌月の生理から移植をすると卵巣も腫れているし体力も疲れているし妊娠するには一月程度休む方が良いです」、、、この様に言う事は必ずしも正しくなく、休まずに次の生理から直ちに移植する方が妊娠しやすいと言えます。
もしかしたら多くの医師がこの点を混乱しているのかも知れません。この様なエビデンスを基に患者さんには間を開ける事なく直ぐに移植を勧めるべきなのかと思います。

The effect of an immediate frozen embryo transfer following a freeze-all protocol: a retrospective analysis from two centres