44歳でFSHがいつも20以上と高く良い卵子が出来ません | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

44歳でFSHがいつも20以上と高く良い卵子が出来ません。採れないこともあります。主治医からはFSHは関係ないからと言われ採卵をし続けていますが、全く胚盤胞になりません。FSHが高いまま採卵し続けて良いのか不安です。どうすれば良いでしょうか?

 

この様な質問がありましたのでお答えします。

 

この様な場合一つの効果的な治療法として、以下の方法がお勧めです。

前周期の高温期の中頃からエストラーナテープ(エストロゲン製剤)を貼り、FSHを下げながら生理を起こします。プレマリンやジュリナでも同じことができます。

それによりほとんどFSHは下がります。

これにより二つの効果があります。

一つはFSHが正常化することでその後のホルモン動態が安定し卵胞の育ちが正常化します。つまり卵子が育ちやすくなります。卵胞の成長はFSH、LH、エストロゲンが絶妙に干渉しながら育っていきます。

 

もう一つの効果として生理中のフライング卵胞(生理中に排卵しそうな卵胞が育つこと)がなくなり子宮内膜と卵胞の育ちがシンクロし新鮮胚移植に適してきます。

そうなるとフェマーラを用いて排卵誘発を行い、HMGも数回用いて複数の卵子を育てられ新鮮胚移植が行えます。

この二つが大きなメリットです。

 

なお卵子への負担を考えて、精液所見が良い場合、受精はなるべく体外受精を行います。顕微授精の場合にはピエゾICSIが卵子への負担が減るためお勧めです。

長期培養による胚へのストレスを避けるため胚盤胞まで培養せず2日目か3日目に初期胚を2個移植します。

 

これがFSHを下げながら卵子に負担を掛けない治療法かと思います。

 

なおこの方法の注意点としてFSHを下げ過ぎると育てられる卵胞を育てなくします。抑制をしながら生理を起こすことが高齢の方には逆効果になります。ここは微妙なさじ加減なのでエストラーナを開始するタイミングや止めるタイミングが大切です。エストラーナが強い場合にはジュリナを1Tに減らします。どんな治療法にも言えますが薬は諸刃の剣になるため一人一人に個別に対応しなければいけません。

 

宜しければ以下の記事も参考にして下さい。

 

卵巣刺激前のエストラーナ補充

 

高齢の場合体外と顕微のどちらが優れている?

 

高齢になると初期胚か胚盤胞か