流産した場合、その後の対応として自然排出と掻爬術(D&C: dilatation and curettage)の2種類があります。
掻爬術をした場合、その後子宮の内膜が薄くなったり、内腔に癒着(asherman症候群)ができたりして妊娠しにくくなるというケースもあります。
今回、掻爬術を受けるとその後の妊娠で早産に至るリスクが上昇するという報告がHum Reprodにありましたので紹介します。
結果
21件の研究が行われ、1853017名が対象となりました。
掻爬手術の既往がある場合、既往がない群と比較して
37週未満の早産のオッズ比は1.29 (95% CI 1.17; 1.42),
32週未満の早期早産のオッズ比1.69 (95% CI 1.20; 2.38)
28週未満の早期早産のオッズ比1.68 (95% CI 1.47; 1.92)
それぞれ有意な上昇が認められました。
コントロール群を薬物による流産処置に限定した場合も掻爬の既往がある群において早産リスクは上昇した。 オッズ比 1.19 (95% CI 1.10; 1.28)
複数回の掻爬の処置を受けた場合、既往がない女性と比較し、
37周未満の早産のオッズ比は.1.74 (95% CI 1.10; 2.76)となり有意な上昇を認めました。
結論
流産後掻爬手術の既往がある場合、既往がない方と比較すると次の妊娠において早産するリスクが上昇しました。
早産のリスクをどのように高めるかについての機序は、依然として推測との事ですが、子宮頸管拡張により、子宮頸部に損傷を与える可能性があり、子宮頸部の無能力によるその後の妊娠における自発的な早産のリスクを増加させる恐れがあるとしています。
この推測は、子宮頸部の生検、LEEP、円錐切除などの子宮頸部への介入により、その後の早産のリスクの増加を引き起こし得るという根拠が別の論文で示唆されています。
また、子宮頸部の損傷により、抗微生物防御機構を損なう可能性があることも別の論文で示唆されています。
もう一つの説は、掻爬による内膜への損傷で胎盤早期剥離、子癇前症、前置胎盤と子宮内胎児発育遅延のリスクを増加させ、その後の妊娠に異常胎盤形成を引き起こす可能性があります。これらの合併症が発生するたびに、早産、帝王切開の原因につながる可能性があるとの事です。
Hum Reprod (2016) 31 (1): 34-45.