受精の際には雌雄前核がそろう2PNが正常と判断されます。もし1つしか前核が無い場合には1PNとして移植には用いないという施設もあります。
この論文では例え1PNでも胚盤胞になれば移植しても大丈夫と言うことを示しており興味深い論文です。
この表は分割胚での1PNと2PNの成績を調べていますが、分割胚だと2PNの方が有意に妊娠率の成績が良い(16% vs 24.4%)事がわかります。出産率も2PNの方が高くなります(14.5% vs 23.7%)。流産率は差がありません(4.3% vs 5.9%)。つまり分割胚だと差が出るため移植すべきではないと言えます。
この表は胚盤胞での1PNと2PNの成績を調べていますが、胚盤胞だと1PNでも2PNでも妊娠率(38.8 vs 35.3)や出産率(37.3 vs 33.1)は変わらない事がわかります。流産率も差がありません(6.7 vs 8.2)。つまり胚盤胞になれば移植しても大丈夫となります。
1PNからできた胚でも胚盤胞の場合には2PNからと比較して先天異常や精神運動性の問題は2歳の段階では認められていません。
この結果から言えることとして
核が2個ないといけない理由は明白で染色体の異常だからです。ただ時として一つの核膜の中に二つの前核が入り込む事があります。分かりやすく例えるなら(枝豆の例えで失礼ですが)一つの枝豆の中に二つの枝豆が入り込んでいる事があるかと思います。あの様な感じです。なぜこの様な事をするのか不明ですが単なる核膜形成のエラーかと思いますし、この様なエラーは成績に余り影響を与えないものだと思います。
今回の論文から1PNの場合には胚盤胞まで培養して、胚盤胞になれば移植しても問題ない事が分かります。この様に常に最新のデータに基づいて今までの慣習(1PN=異常胚)を変えていく事が大切と言えます。
Fertil Steril. 2019 Sep;112(3):527-533.
Obstetrical and neonatal outcomes after transfer of cleavage-stage and blastocyst-stage embryos derived from monopronuclear zygotes: a retrospective cohort study
これが1PN で中央に前核が1個しかありません
これが2PNです。中央に前核が2個あります