胚盤胞移植は分割胚移植よりも胎盤の異常や新生児への影響がある | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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胚盤胞移植は分割胚移植と比較して妊娠率の高さから多くの施設で行われています。

当院でも同様に開院当初から胚盤胞を移植してなるべく早く結果を出す様に努めています。

先月にパブリッシュされたこの論文では胚盤胞と分割胚を比較すると胚盤胞の場合において様々なリスクが高くなることを示しています。

 

デンマーク、ノルウェー、スウェーデンにおいて新鮮胚移植で生まれた56557例の単胎児、16315例の双胎児を、2808323例の自然妊娠の児を後方視的に検討しています。

新鮮胚移植を胚盤胞と分割胚で行い臨床結果を比較検討しています。

以下結果です。胚盤胞移植と分割胚移植において有意差(Pが0.05未満)がある部分ですが以下の部分になります。

前置胎盤の補正オッズ比は2.11で有意差あり

早産の補正オッズ比は1.14で有意差あり

男児と女児の比率の補正オッズ比は1.13で有意差あり

 ⇨(新鮮胚盤胞移植だと男児が生まれやすいという結果です)

 

この結果から言えることとして

 

「胚盤胞まで育てば妊娠はもうすぐ」、この様に考える医師や患者さんは多くいると思います。その考え方は正しく妊娠という点で見ればこれは明らかに正解です。

 

ただ胚盤胞移植は妊娠率を高くするものの、この様な産科的なリスクや性別への影響を抱えており、長期の培養が胚へ何らかの影響を与えている可能性が示唆され、慎重に判断する必要があるのかもしれません。今後の更なる検討が必要であると思われます。

 

生殖医療を行う上で常に考えなければいけないこととして、妊娠率を上げる治療は新しい技術を使う事となり、それは言い換えれば人作り出した技術であり自然とは異なることをしています。自然の行う神業には敵わない部分がある事は否めませんが、自然に授からないのなら我々の英知を集め自然を理解しそれを超えるものを作り上げていかなければいけないのだと改めて考えさられます。

 

Human Reproduction 2020 Apr 28;35(4):805-815.

Obstetric and perinatal risks in 4601 singletons and 884 twins conceived after fresh blastocyst transfers: a Nordic study from the CoNARTaS group