顕微授精でも体外受精でも出生率は変わらない | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

顕微授精は受精率が高いから妊娠率や出産率が高いのではと考える方が多くいます。医師でもその様に答える方も多くいます。しかし論文でのエビデンスとなるとそうではないとなります。これに関しては過去のブログでも何度も取り上げています。

顕微授精は過剰に実施されている

今月号のHuman Reproductionで顕微授精と体外受精での妊娠率、出産率を調べている論文がありましたので紹介します。

1991から2016年にかけてのデータを分析しています。自己卵子を用いたART治療を対象としています。

以下の表が結果ですが、結論としては男性不妊がない場合、顕微授精と体外受精で比較した場合の補正のオッズ比はどの分類でも有意差はなしとなっています。例えば卵子の数が1-3個の場合補正オッズ比は1.03で有意差なし。年代や採卵数などすべての場合において両群間で有意差なしとなります。

 

今回の結果から言える事として、顕微授精の適応をしっかりと守ることが必要だと言えます。つまり男性不妊がある場合や受精障害がある場合には顕微授精は非常に有効ですが、卵子の数が少ないからとか高齢だからとかの理由で顕微授精を選ぶことは正しくはありません。男子不妊や受精障害がない場合にはなるべく体外受精を行うことが好ましいとなります。臨床を行う立場の医師はこれらのエビデンスをもとに情報を提供すべきと言えるのだと思います。

 

ICSI does not improve reproductive outcomes in autologous ovarian response cycles with non-male factor subfertility