新鮮胚移植を行うべき場合はどの様な場合か、また凍結胚移植を行う場合はどういう場合か、そしてそれぞれの問題点はどの様なところかに関して今月号のHuman Reproduction, Volume 34に掲載されていたので紹介します。
日本では多くの施設で全胚凍結をしていますが、アメリカではそんなことはなく新鮮胚移植を行うケースが非常に多く見られます。
このどちらを行うかは妊娠率と出産率を一番重視して考えるべきですが、それだけではなく、副作用、お金の件、子供への影響、妊娠までの時間など多数のことを検討して考えていくべきことです。
この表は新鮮胚移植、凍結胚移植の成績をランダム化比較試験やメタ解析をしているものです。
それぞれのケースにおいてどちらがどのくらい有利かをまとめています。
論文では凍結胚を選択すべき場合として以下をあげています
①early P
刺激中のトリガーの日に黄体ホルモンが上がっている場合には新鮮胚移植は妊娠率を極端に低下させるため全胚凍結が必要
②PGT-A
着床前診断をする場合には一度胚を凍結する必要があります。流産を繰り返している場合などでPGT-Aを行う場合には新鮮胚移植は不可能です。
③凍結胚をできるだけ増やす
AMHが低下している場合など貯卵をすべきケースでは新鮮胚移植は行うべきではなく、まずは採卵して凍結する事を繰り返すべき事が勧められます。以下の図の様にDuo stimを用いてなるべく効率よく貯卵を勧めなるべく早く若いうちに良好胚を凍結しておく事は治療を有利に進めるためにはお勧めの作戦です。
④子宮内膜症や子宮線筋症がある場合
子宮内膜症があると新鮮胚よりも凍結胚の方が好ましいというエビデンスが出ています。特に腺筋症の場合には数ヶ月GnRHを施行した方が良いとのエビデンスも出ています。
⑤胚と内膜の同期が取れない
胚の発育が早すぎる場合や遅すぎる場合には新鮮胚移植は不向きになります。通常は5日目で胚盤胞になりますが、4日目や6日目や7日目で胚盤胞になる場合もあります。ただ子宮内膜は5日目に合わせて厚くなります。この様な胚の育ちが認められる場合には凍結して翌月以降に移植をすべきと言えます。
一方凍結胚の問題点として
①コストがかかる事
凍結して更に融解するためその分のコストがかかります。ただ凍結により新鮮胚より妊娠率が高くなるのであれば逆に凍結すべきと言えます。
②児への影響(健康面やIQや小児がん)
凍結胚から生まれた児に対して色々な結果が出始めており今後注視しなければいけませんが、新鮮胚よりも様々なリスクが高くなるとの報告が出始めています。
現時点ではまだわからない事が多くあり、今後世界中で凍結胚、新鮮胚に関して大規模なランダム化比較試験のメタ解析を行う事が必須と言えます。
Hum Reprod. 2019 Dec 1;34(12):2319-2329
Should we still perform fresh embryo transfers in ART?