凍結胚は新鮮胚よりも子供へのリスクが高くなるか? | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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凍結胚は新鮮胚よりも生まれてくる子供へのリスクが高くなるかどうかは心配な点です。これに関しての論文が今月号のFertility and Sterilityに有りましたので紹介します。
今までは凍結すると生まれる児の体重が少し増えたり胎盤が大きくなると言う報告はいくつもありましたが、凍結しても児への影響はほとんど出ないのではと言う報告が多数を示していました。
今回アメリカでの大規模な研究の結果によると凍結胚移植により児に対して感染症、血液疾患、呼吸器疾患、神経疾患が増える可能性があることが認められました。
この論文では新鮮胚と凍結胚により生まれた児の予後を調べています。2004-2013年に生まれた698,411名の新生児から最終的に14,491名の自己卵子による体外受精で産まれた児を調べています。新鮮胚で生まれた12,390名、凍結胚で生まれた2,101名を比較検討しています。
以下臨床結果です。
新鮮胚を1として比較した場合、凍結胚はどの程度差が出てくるかを示しています。
体重が大きな子供が生まれる確率は1.47となり以前からの報告通り凍結胚が高くなります。
先天奇形は0.95での差は出ていません。
染色体異常と関係無い先天奇形も0.99で差は無し。
感染症は1.46で凍結胚の方が高くなります。
呼吸器疾患は1.23で凍結胚の方が高くなります。
神経疾患は1.32で凍結胚の方が高くなります。

結論
ここ結果を踏まえると全ての胚を必ず凍結すると言う治療方針は検討の余地があり、今後は新鮮胚移植を見直しても良いのかもしれません。

Fertility and Sterility Vol. 112, No. 5, November 2019:900-907
Health outcomes for Massachusetts infants after fresh versus frozen embryo transfer