卵巣機能が低下した方に対して同じ周期に2回採卵することが有効であるという論文がFertil and Sterilにありましたので紹介します。
この論文では卵胞期に通常通り刺激を行い採卵して、その直後から黄体期に再度刺激を行い2回目の採卵を行っていま
す。今までの常識を覆す、興味深い論文です。
この論文では卵胞期と黄体期で卵巣刺激を行い、得られた胚盤胞の染色体を調べています。
対象者は卵巣予備能が低下しており、AMHは1.5ng/ml以下、AFは6個以下です。
刺激は両群ともアンタゴニストprotocolで、卵胞期の場合月経2日目から刺激を行い、黄体期の場合採卵後5日目から刺激を行っています。
ゴナールエフ300単位+ピュレゴン75単位を連日投与で行いました。トリガーはGnRH agonistを用いています。
TEを採取してPGDを行い、自然周期で正倍数性の単一胚盤胞移植を行っています。
結果
43人の患者に卵胞期、黄体期で刺激を行い採卵し、
得られた卵子の数:5.1個 vs 5.7個
MⅡ期卵数:3.4個 vs 4.1個
受精卵数:2.3個 vs 3.2個
生検した胚盤胞数:1.2個 vs 1.4個
それぞれいずれも有意差を認めませんでした。
胚盤胞到達率:34.5% vs 33.5%
正倍数性胚盤胞率:16.2% vs 15.0%
これらも有意差を認めませんでした。
生検した胚盤胞あたりの正倍数性率:46.9% vs 44.8%
顕微授精をしたMⅡ卵あたりの正倍数性胚盤胞率:16.2% vs 15.0%
これらも有意差を認めませんでした。
少なくとも1個の正倍数性の胚盤胞移植を受けた数の比較
卵胞期群:18/43(41.9%)
黄体期群:23/43(53.5%)
両者の合算:30/43(69.8%)
つまり黄体期も刺激をする事で正倍数性胚盤胞獲得率が69.8% - 41.9%=27.9%も上昇する事がわかりました。
卵胞期群と黄体期群の妊娠成績の結果
15個の正倍数性胚盤胞の凍結胚移植が行われました。
卵胞期群の胚盤胞7個のうち、5個(71.4%)が継続妊娠に至りました。流産は1個でした。
黄体期群の胚盤胞8個のうち5個(62.5%)が継続妊娠に至りました。流産は1個でした。
これらは有意差は認められませんでした。
結論
卵巣予備能が低下した女性において同じ周期に卵胞期と黄体期の両方において刺激をした場合、同程度の胚盤胞が得られた。
採卵後の黄体期にも刺激を行うことで移植することができる胚盤胞が増え、その結果として1周期あたりの移植を受けることができる患者の増加を期待できる。
この結果から言えることとして
卵巣機能が低下している場合、閉経のリスクがあるため、できるだけ早く凍結胚を増やすことが求められています。
今までは生理開始から刺激を開始して採卵して、また次の生理を待ち、そこから再度刺激を開始することがスタンダードでしたが、このDuoStimでは1周期に2回採卵できるため凍結胚が2倍速で増えることになります。
Fertil Steril. 2016 Jun;105(6):1488-1495.