ヘパリン投与に明らかな有効は認められなかった | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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移植の際に予防的にヘパリンを用いるケースがありますが、着床時期にヘパリンを用いると妊娠率、出産率が有意に改善するかどうかは疑問があるところです。ヘパリンの副作用も心配なところです。今回これに関してまとめてあるレビューがありましたので紹介します。 

 

ヘパリンは脱落膜化を増強し、子宮内膜の環境を改善することにより体外受精での妊娠率を改善することが示唆されています。ヘパリンは採卵時、採卵後、移植時に用いられます。

 

このレビューでは体外受精を受けた患者へのヘパリンの有用性を調べています。

着床時期にヘパリンが有用かどうかを調べた全ての無作為試験を対象としました。過去のデーターベースから論文を集積しレビューを行い出産率と有害事象を調べました。

 

386名の方を対象とした3件の無作為試験を分析しました。1つの調査は低分子ヘパリンを胚移植時期に、残りの2つの調査は採卵の時期に使用しました。

 

ランダム効果モデルを用いて調査したところ

生児出産率のオッズ比は1.85で、統計的な有意差は認められませんでした。

臨床妊娠率のオッズ比は1.66で、統計的な有意差は認められませんでした。

有害事象は、含まれているすべての研究ではほとんど報告されていませんでした。

一つの研究でヘパリンを使用した方に出血、血小板が減少するなどの有害事象が5〜7%に認められました。

ヘパリンの安全性に関する確かな結論は得られませんでした。

 

 

結論

着床の時期にヘパリンを用いることは体外受精において生児出産率や妊娠率を改善するという根拠は乏しいものでした。

ランダム効果モデルを用いて調べたところ、ヘパリン投与に明らかな有用性は認められませんでした。

有害な事象が起きるかどうかは結論が出ませんでした。

現時点では着床時期にヘパリンを用いることは研究目的以外には正当化されず、今後さらなる研究が必要と思われます。

 

Heparin for assisted reproduction: summary of a Cochrane review 

 2015 Jan;103(1):33-4