良好胚を移植しても妊娠に至らないART反復不成功の場合に慢性子宮内膜炎が原因となるケースがあります。
反復着床障害の30%に慢性子宮内膜炎が認められ、慢性子宮内膜炎がある方の着床率は11.5%低下するという報告もあります。
反復流産の場合、慢性子宮内膜炎を治療すると臨床成績が向上するという報告もあります。
一方、慢性子宮内膜炎の治療は臨床成績に影響しないという報告もあります。
今回原因不明のART反復不成功の方に対して、慢性子宮内膜炎の発症率を調べ、抗生剤で治療を行い、その後のART治療成績に関して報告してある論文がHum Reprodにありましたので紹介します。
方法
原因不明の不妊及び反復不成功の106名を対象にして2009年1月から2012年6月にかけて後方視的に調査しました。
全ての方に子宮鏡検査を施行し、子宮内膜を生検し組織を調べました。
子宮内膜炎と診断された場合抗生剤を投与して、その効果を再度子宮鏡を行い生検にて確認しました。
抗生剤の治療後6ヶ月以内に全ての方が移植を行いました。
抗生剤投与後に子宮内膜炎が治癒した群をグループ1として、抗生剤投与しても治癒しなかった群をグループ2として、それぞれの妊娠率、生児出産率を比較しました。
結果
子宮鏡にて70名が子宮内膜炎と診断されました。
そのうち61名(57.5%)が組織学的に子宮内膜炎と診断されました。48名(45.0%)は培養検査にて子宮内膜炎と診断されました。
一般的な細菌及びマイコプラズマが最も多く認められました。
子宮鏡と組織検査にて子宮内膜炎と診断された61名の方に抗生剤による治療を行ったところ、46名(75.4%)が正常な状態になりました。(グループ1)
残りの15名(24.6%)は治癒しませんでした。(グループ2)
治療後のARTにおいてグループ1の妊娠率は65.2%、
グループ2の妊娠率は33.0%となり有意差が出ました(P = 0.039)。生児出産率はグループ1で60.8%、グループ2で 13.3%となり有意差が出ました(P = 0.02)。
結論
細菌やマイコプラズマが原因となる慢性子宮内膜炎による反復する原因不明の着床障害の場合、抗生剤の治療により、治療後のARTの成績が向上しました。
Hum Reprod (2015) 30 (2): 323-330.