紡錘体を確認して顕微授精を行うべきか? | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

紡錘体には卵子の染色体があります。

非常に大切な部位と言えます。


(この写真で見えているのが紡錘体です)
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顕微授精は卵に直接針をさすため、この卵子の紡錘体を傷つける可能性があります。

卵子の紡錘体は通常の光学顕微鏡では見えないため、培養士が顕微授精を行う際は、紡錘体がありそうな第一極体直下を避けて顕微受精を行っています。


ところが時々紡錘体がこの第一極体から少し離れた位置にある卵があります。そういう卵に対して通常の顕微鏡で顕微授精をすると、紡錘体を刺してしまい、正常の受精が起きなかったり、多前核になったり、受精しなかったり、受精しても分割しなかったり、染色体異常卵が出来る等様々な異常が起こりえる可能性があります。


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最近開発された紡錘体が見える特殊な顕微鏡(特殊偏光顕微鏡)があり、これを用いると紡錘体を刺す事無くより安全な顕微授精を行える可能性があります。

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学会発表等を見ると、この紡錘体が見える顕微鏡(Oosight imagin system)を用いた演題がいくつも発表されています。


それらを見てみると、この特殊な偏光顕微鏡を導入して顕微授精を行うと、有意に受精率が上昇し、多前核率や変性率が低下すると言う報告が見受けられます。しかしそれほど変わらないと言う報告もあります。

今後もこの顕微鏡の有効性に関する論文や演題がいくつも出てくると思います。その際はまた紹介したいと思います。