AMHが低い場合は卵巣予備能が低下しており妊娠しにくいと考えられています。
(AMHに関してはこちら も参考にして下さい)
しかし今までAMHの値と胚発生能、妊娠率に関して検討しているデータは余り出ておりません。
つまり「AMHが低い事がどのくらい妊娠しにくい事か?」が良くはわかっていません。
今年の受精着床学会でこれに関する演題がありましたので紹介します。
新橋夢クリニックからの発表です。
演題
抗ミューラー管ホルモン(AMH)値と体外受精胚移植における胚発生能および妊娠率の相関についての検討
目的
AMHは原始卵胞数の減少を反映して加齢とともに低下すると考えられ卵巣予備能の指標として注目されているが、その有用性は体外受精の方法を選択し成功率を予想するまでには至っていない。
そこで今回体外受精におけるAMHと胚発生能および着床能の関係に着目し、後方視野的に検討を行った。
対象と方法
自然周期において主席卵胞より卵子を回収し顕微授精を行った424周期433個を対象とした。直径180μm、栄養外胚葉細胞数12個以上に達するまで最長170時間まで培養を行い、発生過程を観察した後凍結した。翌周期以降自然周期において移植し17日目に胎嚢が確認できたものを妊娠とした。
AMHは採卵周期の月経3日目に測定し、その数値に従い5未満、5以上10未満、10以上15未満、15以上30未満の4群に分類した。
結果
各群における
卵子回収率%は69、66、69、78
受精率%は88、85、88、86
正常分割率%は71、73、71、70
胚盤胞凍結率%は31、30、34、31
でありいずれにおいても有意差を認めなかった。
妊娠率%は44、69、29、33であり有意差検定はできなかった。
各群年齢の平均±SDは40.8±3.4、39.7±3.3、38.8±3.5、38.3±3.4であった。
考察
AMH低下に伴い胚発生率は低下するであろうと言う予想は完全に覆された。これは高齢になりAMHが低下しても正常受精可能な胚が得られればその後の発生能はAMHの高低によらないことを示唆する。今回の検討では妊娠率について同じ結論を導くには症例数が十分でなく、更に流産率の検討も必要であるが、今後の研究次第では高齢化とは「胚発生能の低下ではなく卵子回収数の低下する現象」と定義できるようになるかもしれない。
この結果から言える事として
AMHはあくまで卵の残り数をあわらしており、AMHが低下している事がイコール卵の質低下や、受精率の低下、妊娠率の低下を意味しているわけではないという事です。
AMHが低くても年齢相当の卵が回収できるという事になります。