列車はうっそうとした原生林を走り抜け、見晴らしのいい平地にやってきたが、笹薮と低木林に覆われた景色が続く。

 

この植生はまるで高い山の中腹のようで、人の気配はまったくない。

このような車窓の風景は、日本中で他にあるのだろうか?

 

冬になると大地の向こうに広がる日本海から、容赦なく風雪が吹き荒れる。本当に厳しい自然環境だ。

 

※写真1:車窓の景色・笹薮と低木林に覆われた北の大地(南稚内~抜海)

 

直線区間が続き、列車の速度が上がってきた。車内を流れる走行音「ガタン~ゴトン~」のリズムが速くなり、列車も軽快に走っている

 

進行方向右側後方を見ると松の木が整然と並んでいるが、きっと鉄道防風林であり防雪林なのだろう。冬の吹雪から列車を守る重要な役割!厳しい自然環境だけど、たくましく育って欲しい。

 

※写真2:厳しい環境に負けない鉄道防風(防雪)林(南稚内~抜海)

 

午前10時43分、抜海(ばっかい)駅が見えてきた。稚内の街を過ぎてからここまで人里を離れた所を通ってきたせいか、少しほっとする。きっと冬はもっとそんな気持ちになるんだろうな~

 

プラットホームは短いが、駅の線路は長い。さすが宗谷本線、かつて長編成の急行列車や貨物列車が活躍していた証。

 

 

 

 

 

 

 

※写真3~9:抜海駅到着(南稚内~抜海)

 

午前10時44分、日本最北端の無人駅で木造駅舎の抜海駅に到着。懐かしいな~木造駅舎。以前はたくさんあったが、今となれば昭和を彷彿させる貴重な駅舎だ。それにしても抜海駅は日本最北端の「冠」が多い。しかもそれだけではない。

 

1983年の大ヒット映画、南極犬「タロ・ジロ」でお馴染みの「南極物語」のロケ地としても有名で、日本を代表する名優・高倉健さんが演じた地でもある。

一見普通の無人駅だが、かなり魅力あり。

 

ちなみに私、高校時代、道東・中標津町のある本屋で、高倉健さんと隣同士で立ち読みした経験あり。凄いオーラで驚きました。

 

あれ?ホームを支える壁に、切った石を使っている・・風情のある駅ですね。

午前10時44分、抜海駅発車。

 

 

 

 

※写真10~13:日本最北端の無人駅で木造駅舎・抜海駅

 

列車は抜海駅を発車し再び原生林の中へ。進行方向左側に牧草地が広がってきた。冷涼な気候を活かした宗谷地方の酪農業は、漁業と共にこの地域の基幹産業。青と緑のコントラストと、白のアクセントがとても印象的だ。

 

牧草地に点在しているのは、牧草ロールを白いビニールで梱包したもの。牧草を刈取り乾燥させ、機械でロールケーキのようにし(牧草ロール)、それをビニールで梱包し発酵させるもので、以前はサイロで作っていた牛の大切な飼料。

 

ところでこの牧草ロール、初めて見る人はいったい何だと思うのだろうか?きっと謎だろうね。

 

※写真14:車窓の景色・爽やかな北海道の夏色(抜海~勇知) 

 

午前10時54分、勇知(ゆうち)駅に到着。いいね~この駅舎。かつて北海道内を走っていた貨物列車の車掌車を駅舎に改造した通称「車掌車駅舎」。

道内のローカル線で度々出会います。

※写真15:日本最北端の車掌車駅舎・勇知駅 

 

これが懐かしの車掌車!

子どもの頃、SL(蒸気機関車)が牽引する貨物列車の最後方に連結されている車掌車を、よく見てました。

※写真16:車掌車との嬉しい再会(名寄市北国博物館)

 

勇知駅を過ぎると線路は右へ大きくカーブ。進行方向右側に牧草地が広がってきた。

あ~!利尻富士~!

ここで会えるとは思っていなかったのでビックリ!

 

ズームして見ると、利尻富士が随分険しく見える。北の大地を見下ろすような猛々しい利尻富士、とても印象に残る山の姿だ。

 

※写真17:車窓の景色・猛々しい姿の利尻富士(勇知~兜沼)

 

お~牛さんたちが登場!これは北海道らしい!みんな美味しそうに牧草を食べている。

 

少し早いランチタイム・・?

白黒のホルスタイン種の乳牛なので、きっと美味しい牛乳や乳製品を、世に提供しているのだろう。

 

私の故郷も日本を代表する酪農地帯。この風景を見ていると、つい故郷を思い出す。本州や海外からのお客さんに、是非見て欲しい北海道らしい一コマ。きっと癒されますよ~

 

※写真18:車窓の景色・広大な牧草地を食べる牛さんたち(勇知~兜沼)

 

いいね~!もう最高!真っ青な大空と広大な緑の大地!とても色鮮やかだ。宗谷地方では、どこにでもある当たり前の風景と思うが、多くの旅人を魅了する素晴らしい絶景!

 

牧草地はまるで心地よい緑の絨毯(じゅうたん)のようで、何と贅沢な景色か。北海道らしいこの風景を、もっと多くの人に知ってもらいたい。

 

※写真19:車窓の景色・これぞ絶景「ザ・北海道!」(勇知~兜沼)

 

あっ!湖が見えてきた。あれは兜沼。自然に囲まれた小さな湖だが、水鳥たちにとって、命をつなぐ大切なオアシスだと思う。兜沼駅に到着したら湖畔を訪ねてみよう。

 

※写真20:車窓の景色・水鳥たちの楽園!兜沼(勇知~兜沼)

 

午前11時、兜沼駅に到着。乗降客は私一人、プラットホームで列車を一人見送る。兜沼駅の滞在時間は約30分。早速、兜沼散策開始!

 

※写真21:一人・・名寄行き普通列車を見送る(兜沼駅)

 

鳥の囀りが聞こえる兜沼のほとりを散歩し、のどかな雰囲気を一人満喫。時間が止まっている感じで、なんかいいな~帰りたくない・・

 

※写真22:北国の美しい夏空と兜沼の風景(兜沼駅付近)

 

午前11時32分、旭川発稚内行き普通列車(4325D)がやって来た。2週間ぶりの再会!まさかこんな展開になるとは・・(笑)

 

4325Dは、宗谷本線を約6時間かけて完全走破する唯一の普通列車で、北海道内で最長距離を走る普通列車!

今日も日本最北の地を目指す乗り鉄さんがいるのだろうね。

 

車両はキハ54・529。窓の上の赤い帯が特徴で、かつて宗谷本線で活躍の「急行礼文」で使用していた急行用キハ54の証。ここで乗車するのも何かの縁ですね。

 

ちなみに2017年3月のダイヤ改正前は、兜沼駅で上下線の列車交換をしていたので、ここでの乗り換えは難しく、今日のようなスケジュールで南稚内~兜沼間を往復することはできなかったと思う。

本当にラッキー!

 

※写真23:宗谷本線を唯一完全走破する普通列車・4325D!(兜沼駅)

 

兜沼駅から見た稚内方面の天気は快晴。帰りも素晴らしい車窓の景色が期待できる。午前11時32分、4325D定刻どおり兜沼駅発車!

 

※写真24:兜沼駅から稚内方面を望む

 

車内の座席は、地域の人々や旅人などでかなり埋まっているが、幸いにも進行方向左窓側席が空いていたので早速確保。これでまた利尻富士の素晴らしい風景に出会える。まずは一安心。

 

おっ!牛さんたちが再登場!さっきはみんな一目散に牧草を食べていたが、満腹になったせいか、食後の昼寝のように休んでいる牛さんもいる。

その気持ち・・よ~くわかるよ。モ~おやすみ。(笑)

 

※写真25:車窓の景色・ランチタイム後の昼寝?(兜沼~勇知)

 

列車は次の勇知駅手前の大きな左カーブに差し掛かる。

ここは進行方向左側に利尻富士が現れる人気スポットと聞くが、真っ青な大空と緑の大地。そして、どこまでも続く鉄道!その景色だけで、私は十分満足です。  

 

※写真26:私お気に入りのスポット!勇知駅手前の大カーブ(兜沼~勇知)

 

 

 (つづく)

 

※追伸:「北海道ローカル線旅日記!夏の宗谷本線」をご訪問いただきまして、ありがとうございます。