自分が生きていることが、自分の道をふさいでいるのだと、彼は感じている。

 そしてまた、自分の道がふさがれていることによって、自分が生きている証(あかし)を得ている。

  頭木弘樹 編訳『カフカ断片集』(新潮文庫)から

 

 自分の存在そのものが生きることの邪魔になっている。世間に自分を合わせることができない。何の疑問もなくスイスイと生きることができない。現実を、人間関係を、器用に生きていくことができない。そんな自分がいる。そんな自分が生きることの妨げになっている。自分の存在がいちばん重い障害になっている。しかし、そんな自分がいるから、誰にも見えない世界がよく見える。そんな自分が、私の生きる証になっている。

写真は京都府「岩船寺」です。