凍った焔(第十章)

 

 どこから世界を覗こうと

 見るとはかすかに愛することであり

 病患とは美しい肉体のより肉体的な劇であり

 絶望とは生活のしっぽであってあたまではない

 きみの絶望が希望と手をつないで戻ってくることを

 きみの記憶と地球の円周を決定的にえらぶことを

 眠りのまえにきみはまだ知らない

 

 『清岡卓行詩集』(現代詩文庫 思潮社)から

 

 この詩はかなり難解だ。まずどこから攻略するか。

 作者は絶望とは「生活のしっぽであってあたまではない」と言っている。絶望が頭であれば、絶望は人を打ちのめすくらい重いが、絶望が尻尾なら、そんなに気にする必要はないということだ。「絶望が希望と手をつないで」必ず戻ってくる。そう人生には絶望と希望がつきものなのだ。希望だけの人生や絶望だけの人生もない。絶望と希望はコインの裏表の関係のようなものだ。絶望と希望が手をつないでやってくる、それを生きるのが人生だ。世界を希望から見てみれば、愛するに足るものであり、病患はきみの肉体をより美しくするために肉体が劇化したものなのだ。これからも絶望が希望と手をつないできみの人生に訪れるだろう。きみはそれを生きていかねばならない。