(征司郎)





雪彦のパスで


この病院に入ったものの・・・


雪彦の勤務形態に驚いた。


アイツ・・・


こんな・・・


アルバイトみたいな働き方をして・・・





雪彦は今晩も非番だったけれど


サメジマホテルズの雪彦の部屋には


全く行く気になれず


父さんの眠る病室へ自然と足が向いた。





巡回の看護師に見つかったら


なんて言い訳しようかな・・・


そう思っていたのに


それは、杞憂に終わった。





看護師「あら。天城先生。


今晩もこちらにおられるのですね」





黒髪もスルーされて


ここにいることにも驚かれることなく


淡々と検温やら血圧測定やらを終えて


看護師は次の病室へと巡回した。






雪彦が・・・


いつも父さんの病室に・・・?


仮眠室でも


ホテルのスイートルームでもなく


ここに・・・?





渡海父「・・・征司郎か・・・」


征司郎「・・・父さん・・・」


渡海父「毎晩遅くまで・・・ありがとう。


だけど、もう家に帰りなさい・・・」





目を閉じたまま


胸は規則正しく上下している。


・・・父さん・・・


夢を見ているのかな・・・





そしてふと下ろした目線の先。


父さんの枕元に


昨夜雪彦が持っていた茶封筒を見つけた。


それは・・・


自分と雪彦のDNA鑑定の結果で・・・






「同じ親から生まれた兄弟である確率


限りなく100%に近い」






・・・同じ親から・・・


100パーセント、ってことは・・・






父さんと母さんのふたりの遺伝子を


雪彦と僕が分け合った・・・ってこと。


蓮の推察通り


雪彦を産んだ女性は


僕の両親から採取した受精卵を


移植されたのかもしれない・・・






・・・思い出すのは・・・


蓮のお母さんの言っていたこと・・・






子育ては


その子その子のビッグバンから始まって


可能性は宇宙のように無限にあるもの。


医者という終点の一点から考えて


それじゃあ・・・まるで逆だ。


その子の個性は・・・?


その子の意思は・・・?


その期待の小さな針穴をくぐれない子は


どうなるの・・・?





そもそも。


考え方のベクトルが違うんだ・・・


その人の人格を何より重んじる大野家。


起点が子どもそのものである大野家。


大人の事情じゃない。


生まれてくる子の人格形成を


何より大切に考えている。


大人はその成長を


大きな愛でサポートする。







渡海の親の遺伝子は


外科医には向いていたかもしれない。


だけど・・・


子育てに関して何かに欠けていた。


僕は蓮と生きることで


その不足を補ってきたんだ・・・






だから今・・・


この胸が張り裂けそうに痛む。


自分のしてしまったことに・・・


気付いていない訳じゃない。


蓮を試すようなことをして・・・


何よりこんな夜更けに・・・


蓮から離れているなんて・・・


不貞を疑われても


仕方がない状況だ・・・


この身は蓮だけにあるのに。


この心は蓮だけのものなのに。






月の光がカーテンから漏れていた。


導かれるように


そっと窓辺に立ってみると・・・





あ・・・


嗚呼・・・





真夜中の駐車場に。


ほんの数台止まっている車の中に。


うちの・・・


僕らの


・・・車を見つけた・・・







*コスモスさんの絵です*






(渡海蓮)





サメジマホテルズは


零治くんが何か言ってくれたのか


俺に協力的で




フロント「お客さまのことは


言ってはいけないのですが。


本日のスイート階にはどなたもまだ


お見えになっておりません」





その情報だけで助かった。


急ぎ車を総合病院に走らせ


ガラガラの駐車場に停めて


お義父さんの病室を見守っていると・・・


夜半を過ぎて


カーテンが開いた。






・・・征司郎。


やはり、ここに居たのか・・・





ホッとしたと同時に


携帯電話が震えた。





征司郎📱「ごめんなさい」


蓮📱「・・・ん・・・」


征司郎📱「今、そっちに行く」


蓮📱「・・・ん・・・」





征司郎の無事が分かり


もう・・・それで十分だった。


どんな言い訳も


どんな謝罪も


何も必要なかった。


ただこの腕の中に


征司郎が戻ってくれば


それで・・・


それだけで・・・





征司郎「・・・蓮・・・」




薄い身体を抱きしめる。




蓮「心配した」


征司郎「ごめんなさい。ごめんなさい」





俺たちは身体を押し付けあって


熱いキスをかわした。





征司郎「・・・ふ・・・」





泣かなくていいんだよ。


お前がこうして


俺の腕の中にいる。




これで・・・いいんだよ・・・




俺とお前は


生まれ変わっても


ひとつの蓮の上にめぐりあうんだ。


もう離れられないの。


離れられないんだよ・・・


それならさ。


互いを許しあって


助け合って


幸せに生きていこう。






渡海(大野)蓮は

コスモスさんの絵をお借りしました。

コスモスさんありがとうございます♡


ご訪問の際にはいいねをお残しくださいませ


コスモスさん

なんと『恋のABCD』

『とうめいたん♡ひよこクラブ』

『ブルーペアン』

『山田タミコ物語』

もうこの物語の半分以上を読破されまして・・・

まじでっかい感謝🙇‍♀️


皆さまにも感謝🙇‍♀️

読んでくださり、ありがとうございます😭


コスモスさんの描かれた智が

蓮・颯・零治に見えて仕方がない😂


また後書きできちんとお礼を申し上げますね。


絵を快く貸してくださり

ありがとうございました♡


そして、どうか・・・嗚呼どうか・・・

消されませんように・・・🙏