12月13日の毎日新聞の一面トップ記事から。

 

内閣支持急落40%

コロナ対策「評価」14%

本社世論調査

 

毎日新聞と社会調査研究センターは12日、全国世論調査を実施した。

菅内閣の支持率は40%で、11月7日に行った前回調査の57%から17ポイント下落した。

不支持率は49%(前回36%)で菅内閣発足後、不支持率が支持率を上回ったのは初めて。

 

 

菅政権の新型コロナウイルス対策について聞いたところ、「評価する」は14%で、前回の34%から20ポイント下がり、

「評価しない」は62%(前回27%)に上昇した。新型コロナ対策の評価が低下したことが支持率の大幅減につながったようだ。

 

 

ということです。

まあ、そういうことなのでしょう。

これだけ連日マスコミが「新型コロナウイルスの感染者が最多を更新しました」と連呼し、国民の不安を煽っていればそれも当然のことです。

 

反面で政府も新型コロナウイルスに関して国民の不安を解消できるような情報及び政策を積極的に発信できなかったということでもあります。

 

 

・「命か経済か」の問題ではない。

 

それはともかく、

毎日新聞に限らず最近のマスコミ報道を見ていて私が特に気になるのは、「GO TO」事業をやり玉にあげて、

新型コロナ対策と経済対策を対極のものであるかのように報道していることです。

 

例えば同毎日新聞の以下の記事です。

 

「GO TO 中止を」67%

 

政府の旅行需要喚起策「GO TO トラベル」事業についても尋ねた。GO TO トラベルを「中止すべきだ」との回答は67%にのぼり、「継続すべきだ」の19%を大きく上回った。(略)

これまでにGO TO トラベルを利用して旅行に行ったかを聞いたところ、「1回利用した」は20%、「何回か利用した」は12%で、「利用したことはない」が68%を占めた。

 

同じく以下の記事。

 

国内感染者 初の3000人突破

医療崩壊 早急に対策を

 

(略)医療関係者の献身的な働きに対し、寄り添い、敬意を表した政策が実施されているだろうか。

例えば、GOTOキャンペーンである。確かに、観光関連に従事する約900万人にとっては現在の状況は死活問題だ。だが、このウイルス感染は人と人が出会うことで起こる以上、旅行や会食を通して行動を促す政策は、新たな感染者を作り出し、医療現場に負荷を強いる。

 

 

特に後半の記事に至っては、GOTOキャンペーンについて「新たな感染者を作り出し、医療現場に負荷を強いる」と明言しています。

 

しかし本当にそうでしょうか?

GOTOキャンペーンはコロナ禍によって停滞した景気・経済を再興させるために春先から継続して行われている経済政策ですから、11月から始まっている「第三波」と因果関係があるとは思えません。

 

時期的な観点からすれば「外国人の入国制限緩和」の方が原因としては怪しいぐらいです。

 

 

嘉悦大学教授で内閣官房参与の高橋洋一氏も「GOTOが感染原因であるというエビデンスはない」と断言しています。

 

 

 

そもそも毎年冬になればインフルエンザが流行するのと同様に、

秋から冬の間に新型コロナが再び感染拡大するであろうことは、京都大学大学院教授 元内閣官房参与 藤井聡氏ら多くの著名人が春の「第一波」の段階から予測していたことでした。

11月からの「第三波」は特別に意外なことではなかったのです。

 

 

後述しますが、私も政府のコロナ対策は不十分であったかと考えていますが、

それは感染が拡大期に入っているのに「GOTO」を続けている、というのとは別の問題だと認識しています。

 

 

前述したように、マスコミは「コロナ対策」と「経済対策」を対極のものであると認識し、

あたかも「コロナ対策」とは「国民の移動(及び経済活動)を制限すること」にある、と考えているようです。

 

これは3月~4月によく言われていた「命か経済か」という不毛(というよりもハッキリいって極めて低次元)な択一問題をマスコミが未だに引きずっているためだと考えられます。

 

それは共同通信が11月14日15日に行った全国世論調査からも見て取れます。

 

政府の取り組みとしての感染防止と経済活動のどちらを優先すべきかについては、「感染防止」が「どちらかといえば」を含め計68.4%だった。「経済活動」は「どちらかといえば」を含め計29.2%に留まった。

 

経済より感染防止を 新型コロナ「不安」8割 =共同世論調査(日刊ゲンダイ) 赤かぶ (asyura2.com)


こういう質問を思いつくということは共同通信が「感染防止」と「経済活動」が相反するものだと考えているからです。

 

「命か経済か」という命題は、即ち「経済をとれば『死』につながる」という意識が根底にあります。

しかし果たして新型コロナウイルスは、そこまで致死率の高い恐ろしい感染症でしょうか?

 

私は医者でも感染症の専門家でもありませんから「この病気はこういうものだ!」と断言することはできませんが、

データをみれば『事実』は確認できます。

 

厚生労働省によりますと、12月14日の時点で

 

日本国内で新型コロナの「陽性者数」は累計で177,960人。

うち「入院治療等を要する者」 25,536人

「退院又は療養解除となった者」 149,391人

「死亡者」 2,584人

「確認中」 557人

 

とあります。

 

国内の発生状況など|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

 

ここから計算される致死率は1.45%

ここまで新型コロナに感染した人の約84%は、既に退院又は療養解除となっています。

 

そして死亡者については70代80代の基礎疾患を持っている人多いということが分かっています。

 

 

 

因みに他の病気と比較しますと、

 

インフルエンザの死亡者が2018年で 3,325人。2019年で3,575人。

肺炎による死亡者が2018年で94,661人。2019年で95,518人。

 

それら全てを含む呼吸器系による疾患による死亡者数の累計は毎年20万人となります。

 

令和1年度:インフルエンザとその他の感染症の死亡者数の累計とは? | RTSaving

 

新型コロナによる死者が上記のものよりも少ないからと言って、感染を拡大させてもいいということにはならないのですが

それでも新型コロナが、少なくとも若者にとっては「感染=死」という類のものではないということが分かるのではないでしょうか?

 

大体、回復している人の数も公表せずに、ただ漠然とその日の感染者数のみを発表し、毎日累計の数字を積み上げていく行為に一体どんな意味があるというのでしょうか?

 

ただ単純に、いたずらに国民の不安を煽り、それを政府のせいにして政治の混乱を招き、あまつさえ日本の経済さえ破綻させようという企みがあるとしか思えません。

 

下記の記事では、日本が2月の段階から、ウイルスの撲滅を目指すのではなく、「重症者中心主義」で「社会経済活動との両立」を基調とした「抑制管理」を目指してきたことが言及されています。非常に良記事です。

 

「命か経済か」の不毛な論争を超えて~「Go To」問題の再整理を – アゴラ (agora-web.jp)

 

 

 

これに対し経済活動に制限を加えるということは、商売で生計を立てている人に対し収入を激減させるよう、サービス業の企業に対して収益を激減させるよう、政府に要求しているのと変わりません。

 

同毎日新聞の記事によると

 

政府が緊急事態宣言を再び発令すべきだと思うかとの問いには、「発令すべきだ」は57%で、「発令する必要はない」は28%、「わからない」は15%だった。

 

という世論調査の結果が記されていますが、これは大変危険なことです。

まさか毎日新聞はそれが世論だといって、また政府に緊急事態宣言を求めるつもりなのでしょうか?

 

4~5月に緊急事態宣言が発令された際も、政府の経済支援はあれどサービス系の企業の倒産が例年よりも増加しています。

 

 

企業の倒産や減収は、そこで働く従業員の生活を脅かすことになり、また経済不況は自殺者の増加を招きます。

 

経済不況で自殺が増加する:コロナウィルス経済対策の重要性(西多昌規) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

だからこそ前回の緊急事態宣言に際して緊急的な経済対策が必要となったのであり、

そしてその一環として始まったのが特にダメージが大きかった飲食業・観光業に対する支援「GOTOキャンペーン」だったわけです。

 

ですから、「命か経済か」ではないのです。

「経済も命」なのです。

 

それを未だにマスコミが理解できていないことには、驚愕せずにはいられません。

 

「GOTO」を停止し、国民の経済活動に制限を加えても、それが感染拡大を抑えることにどれ程の効果が認められるかは分かりません。

しかし、経済が停止することによって生活が奪われる人は確実に生じます。

その辺りの認識がマスコミにはありません。

 

 

こうしたことを書けば、「では経済活動を優先して感染拡大には目を瞑れというのか」という批判を受けることになるでしょう。

 

これについては、「そもそも新型コロナはどうやって人に感染するのか」について考える必要があると思います。

 

先の毎日新聞の記事には「このウイルス感染は人と人が出会うことで起こる」と書かれていました。

私はこの認識が正しくないと考えます。

 

前述の藤井聡教授は新型コロナは「飛沫」で感染する、と述べています。

 

そしてコロナ感染症対策として以下の4つを挙げています。

 

高齢者・基礎疾患者・妊婦の保護

死亡率と重症化率は50歳以下の50~100倍

 

鼻の穴と口 目を触らない

これを徹底すれば仮に手洗いをせずにともほぼ感染しない

 

飲み会・カラオケ等の「徹底」対策

問題は「近接」ではなく「発声」。自粛要請の場合は政府による休業補償は必須

 

喚起の徹底

冬で感染が拡大しているのは喚起が十分行われないから

 

(「マンガでわかる こんなにヤバいコロナ大不況 消費税凍結とMMTが日本経済を救う!」宝島社)

 

「新型コロナは飛沫感染する」。この前提さえ踏まえていれば、人の移動や接触は過度に警戒する必要はないと考えられるのです。

(「GOTOイート」に関しては、大人数で会話しながらの食事に注意する必要がある)

 

 

・本当に非難されるべきはカネがあったにも関わらず、医療従事者、医療器具を十分に用意できなかったこと。

 

新型コロナは少なくとも若者にとっては致死性の高い病気ではありませんが、感染力は高く、また症状が発症してからの進行が早く、治療に際しては人口呼吸器が必要となります。

 

故に最も危惧されるのが、感染スピードがそれを許容しうる病床や人工呼吸器の数を上回ること。

またそこまで至らなくとも感染者の増加によって医療従事者が疲弊し、感染者に治療に十分にあたれなくなること。

即ち「医療崩壊」に陥ることです。

 

これについて早急な対策が必要であることは全くその通りです。

 

因みに現在日本にコロナ用の対策病床数は51,994床。

患者は24,882人なので病床使用率は47.8%となっています。

 

人工呼吸器は28,197台ですから、これ以上重症者が増えると足りなくなる恐れがあります。

 

COVID-19 Japan - 新型コロナウイルス対策ダッシュボード #StopCOVID19JP

 

 

対策病床数にはまだ余裕はあるようですが、医療スタッフが不足しているようです。

 

日本は「病床数は世界一」なのに、なぜ新型コロナで医療崩壊寸前になるのか - ライブドアニュース (livedoor.com)

 

これについて内閣官房参与の高橋洋一氏は、6月の第二次補正予算の際に今後コロナで予期せぬ事態が発生したときのために予備費10兆円が計上されたはずなのに、それが十分に使用されることなく7兆円も余っていることを問題視しています。

 

 

 

 

予備費10兆円については私も過去のブログで書いたことがありましたが

 

199.「さあ、みんなで『カネとは何か』について語ろう!それがこの社会に必要なことだ!」 | 伊藤和成『庶民が天下国家語って何が悪い』ブログ (ameblo.jp)

 

確かにこの時

 

「今回の新型コロナ禍は、何が次にどのくらいの確立で発生するか確固たることが言えない。不確実な事態にも早急に対応するためには相応の予備費が必要」

 

という説明がなされました。

野党はこの時これを反対し予備費の減額を求めたのでした。

 

冬になれば再度感染が拡大するという話はこの時からあったにも関わらず、結局この時のお金はデフレギャップを埋めるために国民に給付されることもなく、コロナに従事する医療スタッフを確保するために使われたわけでもなく、7兆円も残していた。

それでいて8日に決定した追加経済対策でまた予備費が10兆円計上されているのですから、本当に意味が分かりません。

一体いつ、何のために使うお金なのでしょう?

 

予備費に反対していた野党は何故にここを追求しないのでしょうか?

「使い道が分からなかったのなら今度からは俺たちが決めてやる」ぐらい言えばいいのに、結局また下らない「GOTO」叩きしかしてないわけですよね。

 

政府としても、コロナ対策と経済対策を両輪と捉え、本気で取り組むつもりがあったのなら、この7兆円を有効に活用することを考えたはずです。

 

そう考えると、やはり政府のコロナ対策は不十分であったと言わねばなりませんし、国民のために必要に応じて思い切った支出が出来ない政府であるならば支持率が落ちるのも仕方ないのだろうと思います。

 

 

 

・支持率が下がるのは、結局政府の政策が全ての国民に届くものでないから

 

最後になりますが、結局「GO TO トラベル」が叩かれたり、政府の支持率が下がるのは、政府の政策が一部の者を対象にしたものであって、全ての国民に届いたものではないからだと私は考えています。

 

それでいて全ての国民に関係するコロナ対策に関しては、目に見えた効果がないからです。

 

世論調査にもあったように、「GO TO トラベル」は67%の人が「利用したことがない」と答えています。私も利用したことがありません。

あの政策の恩恵にあやかれるのは旅行業界と、頻繁に旅行に出かけることができる余裕のある人達です。

 

反対に「GO TO イート」は、「コロナは飛沫で感染する」という前提から見れば、むしろ「トラベル」よりも感染リスクが高いものです。

それでも「トラベル」ほど叩かれないのは、「コロナは人の移動と接触で感染する」という誤解のためもありますが、結局恩恵にあやかれる人が多いからです。

 

人は自身が恩恵にあやかれる政策を批判しません。

反対に自分には関係ない、一部の人間しか得をしない政策に関してはマイナスの評価を下すものなのです。

 

そういう意味では、10日に決定された与党税制大綱も同様です。

多くの人にとっては評価の対象とはならないものでしょう。

 

従って菅内閣の支持率は、今後も低下していくことになるのではないかと思っています。