茄子は焼き茄子か茄子の酢の物にする。焼き茄子はビストロ任せ、酢の物は酢をきかせて絞るだけです。いずれも鰹節をかけることが多い。すりごまの場合もあります。
農林水産省の「うちの郷土料理」には茄子が各地に登場します。その中で「茄子そうめん」が香川県と石川県にあります。実は高知県の出身である私の家でも昔から茄子そうめんを夏によく食べました。今でも好きな料理です。
香川県中讃地域の茄子そうめんの説明を「うちの郷土料理」から引用します。
「主な使用食材 そうめん、なす。
歴史・由来・関連行事
旬のなすと小豆島特産のそうめんを用いて、唐辛子で味を引き立てた家庭料理で、主食にもおかずにも最適である。そうめんは少しご飯の足らない時に常備しておくと便利な食材であり、なすそうめんは「おなすにそうめんを抱かせる」といわれるように主婦にとっては大変扱いやすく熟練したこつを必要とせず、簡単につくれるので、広く一般家庭に浸透している料理である。なすは油と煮汁を含んで柔らかく、ボリュームもあり、食欲のない暑い夏にも食べやすく、夏バテ防止にもなるといわれている。
香川県西部で栽培され、一般的ななすの約3倍の大きさで皮が柔らかい品種の三豊なすを使うことも多く、そのとろけるような食感が、出汁によく合い具材として重宝される。
昔からのなすそうめんは、唐辛子とそうめんだけでつくっていたが、ここでは、油揚げ、しょうがを加えている。」
石川県の茄子そうめんの説明によると、そうめんの一大産地だった奥能登の輪島市で、室町時代からそうめんづくりが根づき、漆器の「輪島塗り」以上の長い歴史があるのだそうです。江戸時代に入ると、その評判はいっそう高まり各地へ輸出されたとあります。昭和に入るころには産業として衰退していき、名産は輪島塗りに取って代わられたそうです。
石川県のそうめんには、「おさよ」の悲しい物語があります。輪島市門前町大滝から和田を結ぶ市道まがき線に作られたトンネルは「おさよトンネル」と名付けられ、道の駅「寄り道パーキング 七浦(しつら)」で特産品を求める観光客で賑わっています。
ひとくち茄子ひとくちほどの紫や 能村登四郎
休め田の土に育ちし茄子の紺 右城暮石
原爆忌強火もて茄子焼きにけり 鈴木真砂女
さうめんの束のほどけし施餓鬼かな 岸本尚毅
さうめんや妻は歌舞伎へ行きて留守 草間時彦
素麺や胡瓜の花を浮かせあり 長谷川櫂
究極の画材となりし鴨茄子 かずモン
手づかみやスンダ料理の生の茄子
茄子植ゑて名札に「米」といふ一字
寒風に素麺を干すはたごかな
女学校跡の茶店の冷素麺