お弁当アーカイブ ☆彡(0026) 焼き肉ときんぴら牛蒡

「金平(きんぴら)」は日本食の惣菜の一つです。繊切りにした野菜などを砂糖と醤油で甘辛く炒めたものの総称です。主に牛蒡です。大根の皮を細長く切って炒めたり、独活の皮をきんぴら仕立てにするととても美味しい一品になります。

とくに牛肉のしぐれ煮や牛丼などに添える牛蒡のきんぴらの脇役としての活躍が大好きです。

きんぴらを作るときにも材料をすべて合わしておいてビストロのメニューで「きんぴら」を選ぶだけです。

農林水産省の「うちの郷土料理」には、「きんぴら」は東京全域の郷土料理とあり、その名前の由来があります。それを引用します。
「「きんぴら」の名は、江戸時代に流行した古浄瑠璃「金平浄瑠璃」の主人公で、金太郎で有名な坂田金時の息子という設定の「坂田金平」に由来していると言われる。ごぼうのしっかりした食感や歯ごたえ、唐辛子のピリ辛さを坂田金平の強さや勇ましさに例え、「きんぴらごぼう」と呼ばれるようになったとされる。」

きんぴらにする牛蒡の国内で栽培されている90%以上は、長い年月をかけて改良された滝野川ごぼうの血を受け継ぐ品種だそうです。牛蒡は古くから伝わる江戸東京野菜の1つです。京野菜、加賀野菜などと並んで江戸東京野菜と呼ばれる「伝統野菜」です。滝野川村で栽培された滝野川ごぼうは、参勤交代で集められた武士たちが、自分たちの地元から持参した野菜の種を栽培して品種改良したもので、その栽培地が滝野川村でした。練馬大根などと同様の歴史です。

ごぼうは「長根種」と「短根種」があります。根の長さが70~100cm程の長根種が「滝野川ごぼう」で関東地方で多く栽培され、根の長さ30~50cm程の短根種は西日本で栽培され、「堀川ごぼう」「大浦ごぼう」などがあります。

生ごぼうの可食部100gの熱量は65kcal、蛋白質1.8g、脂質0.1g、炭水化物15.4g、無機質(主に、カリウム320mg・マグネシウム54mgなど)、ビタミン(主に、葉酸68μg・ビタミンC3mgなど)、食物繊維5.7gです。

日本人にとって牛蒡は神事のお供え物にするほど大切で美味しい食べ物ですが、牛蒡を食べるのは日本と台湾くらいです。昔、外国人捕虜に牛蒡を与えたのを木の根を食べさせたという誤解で戦後にBC級戦犯として虐待の罪で処罰された日本人がいました。映画化された『貝になった男』(上坂冬子著)では、新潟県直江津町(現上越市)にあった東京俘虜収容所第4分所の裁判で、8人の日本人が絞首刑になりました。

歴史と文化の多様性が理解されるようになった現在では、いかがでしょうか。牛蒡のきんぴらが大好きというフランス人がテレビで紹介されるような世界になっています。

 

牛蒡掘る黒土鍬にへばりつく        高浜虚子
穴さむく土音のして牛蒡ほる        飯田蛇笏
老の息うちしづめつつ牛蒡引く       後藤夜半

シェフは腕叩き一気に牛蒡引く       かずモン
笹がきの牛蒡たつぷり猪の鍋
ある時はサラダの主役新牛蒡
関東ローム層こその牛蒡の長さかな