ニューヨーク物語 47 | 鬼ですけど…それが何か?

鬼ですけど…それが何か?

振付師KAZUMI-BOYのブログ

さて、後期編は新しく出来た友人の話から始めようと思う。




友人の名はカズシ。


各国を旅行中にニューヨークに立ち寄った日本人である。


彼は私より一つ歳上で、後に私の親友となる。



出会いはステップスであった。




私よりも先にジョディーが彼と知り合い、私はある日ジョディーから彼を紹介されたのである。




「あなた達、絶対に仲良くなると思うわ!」


ジョディーは私とカズシが初対面であるにも関わらず、自信ありげに断言した。


そして、ジョディーは正しかったのである。




カズシは男二人兄弟の長男であったが、実家の自動車修理工場を継ぐのが嫌で家を飛び出し、住み込みでホテルのバーテンダーをしたり、金が貯まるとフラりと旅に出たりと『自分探し』の真っ最中だった。



彼はありとあらゆる事柄に好奇心を持ち、興味のある事にはことごとく着手した。



そんな興味の対象の一つにタップダンスがあった。



今回の自分探しの旅の途中でニューヨークに立ち寄ったのは、タップダンスを満喫する為であった。




カズシは行動力と瞬発力の塊。



『こうだ!』と思えば、即座に行動に移した。


しかしその反面、非常に思慮深く用意周到な部分も持ち合わせており、決して無謀な事はしない。






ジョディーはホームパーティーが大好きで、ウチでは度々、何かにつけてホームパーティーが催された。


ジョディーは非常にカズシを気に入り、彼の歓迎パーティーを開いた。




「カズミはいいなぁ、夢中になれる事があって。こうやって目的を持ってニューヨークで頑張ってる。」


パーティーの最中、カズシが言った。


「そうかなぁ…俺はカズシみたいにアチコチ旅してみたいよ!」



私達はほぼ真反対の性格をしていた。



カズシがあくまで冷静なら、私は激昂するタイプ。


私が大雑把なら、カズシは几帳面。


感情の起伏が穏やかなカズシと、感情の起伏が激しい私…と言う具合であった。



日本に帰国後、カズシは唯一、私の踊りに対して真っ向から物を言う人物になる。


私が出演する舞台を観に来ては、厳しい意見が飛んで来た。


「65点!」


「ええー!?なんでさ!?結構頑張ったのに!」


「なんか…カズミの踊り、ムラッ気があり過ぎ!途中、テンション落ちたろ?」

「バレた(笑)?」


「バレバレ!」




と言った感じであり、私は彼にダメ出しされる事が嬉しかった。




知り合ってから、ほんの数週間でカズシはニューヨークから次の国へと旅立った。



「一回帰国して、今度はもっと長く来るよ!カズミがニューヨークに居る間に!」


「うん!待ってる!」


「良かったらコレ、貰ってくれないか?」


短期間の滞在だと言うのに、カズシは高そうな自転車を買い、日本に持って帰れないからと私に惜し気も無く譲り渡した。



物語中盤にチラリと書いた、ジョディーを心配させた例のあの自転車である。


「こんな高そうな自転車、本当にいいの?」


「うん!カズミ乗ってよ!」




こうして、カズシの初めてのニューヨークは終了したが、数ヵ月後、彼は約束通りニューヨークに戻って来た。




私達はニューヨークでも日本でも、四六時中一緒に居る様な事はなく、日頃は各々の生活に必死だった。



そして、たまに会っては延々と色んな事を話し合うのである。




大切な出会いの一つであった。