舞台稽古を終えて、二つ先の振付の打ち合わせを終えて、ホテルに帰った。
ちょっとしたアクシデントで、舞台稽古の休憩中に振付を変更した。
今回の月組公演『アルジェの男』の振付に呼ばれたのは、柴田先生のご指名を頂いたからだそうだ。
私は、以前喜多先生が振り付けられた場面の改訂を求められた。
この大役、最後まで全うしなければならない。
私は以前にも、前任者の振付の改訂をさせて頂いた事がある。
『ダル レークの恋』と言う作品だった。
前任者の思い、技術、観客の脳裏に残る印象…
私に取って、それらを改めると言う事は、依頼してくる演出サイドの想像を遥かに上回るプレッシャーが掛かる。
今日ほど、キツかった事は無い。
スタッフは、私の改訂版の振付をどう見るだろうか?
お客様は気に入って下さるだろうか?
日頃は、休憩時間に頭を切り替え、そうしたプレッシャーから逃れられるのだが、今日は上手く行かなかった。
休憩になると、頭を過るのはケンポーの事ばかりで、自分を奮い立たせる事が出来なかった。
私は、泣きたい時に泣けない事が多い。
眼を赤くして舞台に立てないし、振付や舞台稽古の最中に集中力を欠くなど最低だ。
私は、最低の人間にはなりたくない。
しかし、泣きたい時に泣けないのも如何な物か…。
ちょっとだけ弱音を吐きたくなる。