![](https://i.ytimg.com/vi/glKmOTdhb_M/maxresdefault.jpg)
ゴジラの音楽
子供の頃に、
手塚先生のアニメで音楽と映像のシンクロの心地よさ
というものを教えてもらったと前に述べた。
その次に衝撃を受けたのは、
1970年に『東宝チャンピオンまつり』という子供向け映画興行の
1本として公開された映画『モスラ対ゴジラ』(本多猪四郎/監督 1964年)
の再上映短縮版を母に連れられて鑑賞した時なのである。
そう劇場で、あの伊福部昭氏の音楽を浴びたのだ。
特にこの作品では、『ライト・モチーフ』という技法が用いられて、
ゴジラの登場シーンにはゴジラの曲。
モスラの登場シーンにはモスラの曲。
そして二大怪獣が戦う時にはモスラ対ゴジラのテーマ。
が流れるという、音楽的にも画面を盛り上げる工夫がされている。
さらに、日本を代表するデュオ、若き日のザ・ピーナッツが、
映画『モスラ』(本多猪四郎/監督 1961年)に続いて
モスラの巫女と言える小美人を演じているので、
その美しいハーモニーを存分に聴かせてくれるのだ。
これは大人になってからわかったことなのだけども、
邦画で世代を超えて最も有名な主題歌である『モスラの歌』の作者は、
伊福部昭氏ではない。NHK朝ドラでも取り上げられた古関裕而氏なのだ。
だからこの映画で、伊福部氏は『モスラの歌』を演奏していないのだ。
ピーナッツは、なんとアカペラで歌っているのだ。
まあ、それが巫女としての本来の姿なのだけどね。
ピーナッツだからこその美いハーモニーが単能できるのだが、
このシーン、よく聞くと、アカペラ『モスラの歌』のバックに
全く別の曲が静かにが流れているのだ。
ここになんだか伊福部氏の音楽家としての意地を感じる。
「この曲は俺の曲ではないから演奏はしない
その代わり、最高に美しく聴けるようにしてやる」
という魂の叫びを感じとることができるのである。
さらにこの映画の為に『マハラ・モスラ』『聖なる泉』という
美しい曲をピーナッツに歌わせている。
特に『聖なる泉』はこの作品の中のモスラのテーマとして、
上記『ライト・モチーフ』として使われていて、
大いに盛り上げているのだ。
こんな映画を、物心付いたばかりのころに見たものだから、
音楽の力に興奮し、映像と音楽のシンクロの威力に感動したものであった。
続くチャンピオンまつりでのゴジラ映画
『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 三大怪獣地球最大の決戦』
(『三大怪獣地球最大の決戦』本多猪四郎/監督 1964年の短縮版)
『キングギドラ対ゴジラ 怪獣大戦争』
(『怪獣大戦争』本多猪四郎/監督 1965年の短縮版)
『ゴジラ電撃第作戦』
(『怪獣総進撃』本多猪四郎/監督 1968年の短縮版)
なども、伊福部氏の音楽が見事に盛り上げてくれる作品であった。
ところが、当時久しぶりのゴジラ映画の新作である
『ゴジラ対ヘドラ』(坂野義光/監督 1971年)の音楽は
真鍋理一郎氏であった。
ゴジラの登場シーンに伊福部氏の曲が掛からなかったので、
子供心にも大変がっかりしたのを覚えている。
その代わり、この作品では最高にクレイジーな主題歌が用意されていた。
それがコレ。
もう’70年代まっしぐらと言えるこの曲。
カラオケで歌うと無茶苦茶盛り上がります。
坂野監督の凝った宴出で、第1作の『ゴジラ』(本多猪四郎/監督 1954年)
以来社会風刺をテーマにした本作は、予算削減の中でもアイディア次第で
良い作品は作れるということを証明してくれた傑作だと思う。
子供の頃の影響は、後々までずっと残る。
近年の『シン・ゴジラ』(庵野秀明/総監督 2016年)や。
『ゴジラ-1.0』(山崎貴/監督 2023年)でも伊福部氏の楽曲は使われていたが、
両監督とも、私とほぼ同世代。だからやはりゴジラには伊福部氏の音楽なのだね。
コレはもう遺伝子に細胞レベルでに刻み込まれてしまったかもしれない。
それほど当時映画館で体験した世代にとっては、大きな感動だったのだ。
伊福部さん、ゴジラのスタッフの皆さん。
すばらしい経験をありがとう。
音楽の力は真に偉大なのだね。
3月8日 あと少しです。
こちらもよろしく。