「シンギュラリティ」「第4次産業革命」とは?!-「デジタル・オア・ダイ」時代の岐路- | 中谷一馬オフィシャルブログ「おもしろき こともなき世を おもしろく」Powered by Ameba

「シンギュラリティ」「第4次産業革命」とは?!-「デジタル・オア・ダイ」時代の岐路-

現在の日本は、世界のリーダーとして第4次産業革命を牽引し、社会のデジタル化、スマート化を進めるか、あるいは現状のルートをただそのまま進み、自らもう先がないというジリ貧状態に追い込まれるかという岐路に立たされてます。


日本の経済が成長していかないのは、教育や若者に対する支出を渋り続けた結果、少子高齢化が大きく進み、あらゆる格差が拡がるなど、人への投資ができていないことと、生産性、効率性を高めるデジタル化が地方や中小企業の隅々まで行き渡っていないことが大きな要因の一つと考えております。


私は、「10年後の”常識”を創る。」政策の一つとして、日本経済全体のありとあらゆるものを積極的にデジタル化し、アナログなモデルからの脱却を図り、社会のスマート化を進め、豊かな日本を再興したいと思っています。


本記事では、想定する未来から逆算した必要な政策を思考するために、政府、行政、専門家が語る「第4次産業革命」と「シンギュラリティ」に関する発言をまとめました。


近未来は、どんな世界になると予測されているのか、ご興味のある方は、是非ご高覧ください。

 

 


1.    第4次産業革命とは

 

第4次産業革命とは、18世紀末以降の水力や蒸気機関による工場の機械化である第1次産業革命、20世紀初頭の分業に基づく電力を用いた大量生産である第2次産業革命、1970年代初頭からの電子工学や情報技術を用いた一層のオートメーション化である第3次産業革命に続く、次のようないくつかのコアとなる技術革新を指す。

 一つ目はIoT 及びビックデータである。工場の機械の稼働状況から、交通、気象、個人の健康状況まで様々な情報がデータ化され、それらをネットワークでつなげてまとめ、これを解析・利用することで、新たな付加価値が生まれている。

 二つ目はAIである。人間がコンピューターに対してあらかじめ分析上注目すべき要素を全て与えなくとも、コンピューター自らが学習し、一定の判断を行うことが可能となっている。加えて、従来のロボット技術も、更に複雑な作業が可能となっているほか、3Dプリンターの発展により、省スペースで複雑な工作物の製造も可能となっている。

 こうした技術革新により、①大量生産・画一的サービス提供からここにカスタマイズされた生産・サービスの提供、②既に存在している資源・資産の効率的な活用、③AIやロボットによる、従来人間によって行われていた労働の補助・代替などが可能となる。企業などの生産者側からみれば、これまでの財・サービスの生産・提供の在り方が大きく変化し、生産の効率性が飛躍的に向上する可能性があるほか、消費者側からみれば、既存の財・サービスを今までよりも低価格で好きな時に適量購入できるだけでなく、潜在的に欲していた新しい財・サービスも享受することが期待される。

(日本経済2016-2017:内閣府)

 

日本の成長戦略である「未来投資戦略2017」。この中で成長を実現していく鍵として「第4次産業革命」(IoT、ビックデータ、人工知能(AI)、ロボット、シェアリングエコノミー等)のイノベーションを、あらゆる産業や社会生活に取り入れることにより、様々な社会課題を解決する「Society5.0」を実現していくとしている。

 

 

2.    第4次産業革命とSociety5.0の関係

 

 

3.    IoT (Internet of Things)・ビックデータ・AI等の新しいICT (Information and Communication Technology : 情報通信技術)による経済貢献回路

 

少子高齢化や人口減少が進む中で中長期的な経済成長を実現していくためには、供給面では、「企業の生産性向上」と「労働参加拡大と労働の質向上」が重要である。前者については、企業活動の観点から「①ICTに係る投資」及び「②ICTに係る利活用」へさらに分解することができる。後者については、労働投入量(人数×時間)についてか単位あたりの労働力についてかという観点から「③ICTに係る労働参画の促進」及び「④ICTに係る労働力向上」に分解することができる。需要面では、「新たな商品やサービスの創造」と「グローバル需要の取り組み」が重要である。前者については、ICTが直接的あるいは間接的に係るかの観点から「⑤ICTに係る商品・サービスやビジネスの創出」及び「⑥ICTを通じた消費の促進」へ分解できる。後者については、需要の内需・外需の別から「⑦ICTに係る輸出や海外投資」及び「⑧ICTを活用したインバウンド需要の喚起」に分けられる。

(H28 情報通信白書:総務省)

 

〇「IoT導入で年2.4%成長に」(日経新聞、2017.07.26)

 IoTを使って企業が経営改革を進めれば、2030年のGDPが725兆円程度になるとの試算をまとめた。内閣府が試算する標準的な見通しよりも約130兆円多くなる。月内公表の情報通信白書(平成29年度版)に盛り込まれる見込み。

 

4.    IoT/ビックデータ/AIをめぐる動向・・・変化は起きているか

 

①IoT/ビックデータを既に活用している企業は1割未満

 (『IoT・ビックデータ・AI時代の情報通信政策』総務省 (2016.5.24) 日本政策投資銀行「企業行動に関する意識調査2015」)

 

 

②IoT、AI等の新技術について関心はあるが、総じて活用状況は1割未満と低い。(『第4次産業革命と中小企業』中小企業庁 (H29.5.17)委託「中小企業の成長に向けた事業戦略等に関する調査」2016年11月、㈱野村総合研究所)

 

 

5. 第4次産業革命に関する議論            

〇第4次産業革命の効果的実施のための措置

①「第4次産業革命 対応急げ」清家篤 (日経新聞、2017.4.28)

 技術革新により生産性が上昇すれば、それを埋め合わせる生産拡大がない限り必要雇用量は減少する。また、雇用の内容についても大きく変わるだろう。…(略)…第4次産業革命は、「雇用への脅威」ではなく、①人間にしかできない仕事のみ配置して人事不足に対処し、②生命科学の進歩により労働寿命を延ばすとともに、中高年の労働力を確保することで、少子高齢化問題への解決につなげることもできる。

 

②「労働市場の流動化が先決」乾友彦 (日経新聞、2017.6.26)

IT導入の主要な目的は業務の合理化、コスト削減であるが、日本では、高い雇用保障があるため、その効果を期待できないことからIT導入が見送られる。それらの労働市場改革を進めない限り、IT投資、ロボットやAIの導入機運は高まらない。また、企業がIT導入に取り組める環境でなければ、IT人材もその能力を十分に発揮されない可能性が高い。そのため、ITの導入・高度利用のためには、人材の流動化を促進し、労働者が適材適所で活躍できる環境を整えることが不可欠。

 

〇第4次産業革命と中小企業

③日本商工会議所「地域・中小企業におけるIoT等の活用促進に関する意見~第4次産業革命とへの対応に向けて~」(2017.7.20)

中小企業、特に小規模事業者には、IT技術活用のための人材や資金、情報等の経営資源に制約がある。我が国産業の国際競争力の強化には、産業構造の多数を占める中小企業のIT活用による生産性向上が不可欠。

 →政府は中小企業のIT活用にさらなる支援を

 

④「4次産業革、中小企業は果敢に挑戦を」橋本虎之助(風向計) (日経産業新聞、2017.7.4)

中小企業のIoT、ビックデータ、AIなどの活用度合いは非常に低く、ハードルが高い。しかし、現場力によるデータの蓄積などの強みも生かしながら臆することなく果敢に挑戦し、新たな価値を次々と生み出すことが重要だ。これこそが中小企業パワーの源泉だ。

 

 

6. AI (人工知能)をめぐる主な議論

〇雇用・就業構造について

①「人工知能の発達で消える職業」松田卓也(プレジデント、2015.6.15)

現在進行している人工知能革命は、オフィス労働者の地位を危うくする。またロボットの発達は、肉体労働者の職域を奪う。もちろん、協働により生産性を上げて豊かな社会になるかもしれないが、問題はその変化があまりにも急であるので、労働者がそれについていけないことである。

 

②「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に~601種の職業ごとに、コンピューター奇術による代替確率を試算~」(野村総合研究所、2015年12月号)

野村総合研究所と英オックスフォード大学との共同研究により、10~20年後に、日本の労働人口の約49%が、就いている職業において、人工知能等による代替が可能であるとの推計結果が得られ、また創造性、協調性が必要な業務や否定形業務は、人が担うことになるとされた。

 

③「IoTやAIが描く社会」私たちの働き方・生活はどう変わる?」「DIO」(連合総研レポート 2016年12月号)

(1) 働き方の未来像(柳川範之)

AIやロボット技術の進展により、時間と場所にとらわれない働き方が可能になる。また企業組織も(企業・廃業も含め)柔軟化していくことから、労働者が適材適所で働けるような体制作りが必要となる。雇用を守るためには、労働者もそのような能力を身に着けていくことが不可欠になる。

 

(2)技術革新(第4次産業革命)と働き方の未来 (宮原千枝)

技術革新等は、持続可能な社会の実現に向け積極的に活用することが必要。中小企業にこそIoTが必要であり、業種・企業の垣根を越えた共通システムの整備等中小企業中心の支援を強化していく必要がある。機械で代替可能な仕事も増加する中で、仕事の内容や働き方が多様化する一方、人材教育、労働移動等に対するルールの設定や支援がより重要になる。

 

④「新産業革命による労働市場のパラダイムシフトへの対応」(経済同友会2016.8)

新産業革命の進展により、従来の職業が消滅・創出するとともにグローバルな人材獲得・人材育成競争が激化するとしたうえで①「労働」について、人材や労働の価値基準の変化②「労働市場」について、円滑に労働できる多様な市場へのパラダイムシフトが起こる可能性がある、としている。

 

⑤「ドイツ労組 『製造のデジタル化に積極関与 職業訓練と研修で主導権』」熊谷徹 (エコノミスト 2017.6.27)

ドイツ最大の産業別労組・IGメタルは、官民一体のIoT推進団体「プラットフォームインダストリー4.0」(連邦経済エネルギー大臣・連邦教育科学大臣)に主要経済団体とともに参加している。PI4.0は2017年3月の提言書において、職業教育の改革及び職場での研修制度の充実を提案している。

 

⑥「人工知能 (AI)の進化が雇用等に与える影響」(平成28年度版 情報通信白書)

現在の技術革新が過去のそれとの違いとして、道具としてICTなどの技術を活用する仕組みから、人とAIの共同作業に重点を置いた業務が中核となる仕組みへの変革が期待されているということである。技術革新による雇用代替や創出は、かつてから存在しており、AIについてだけの問題ではない。しかし、技術革新による雇用の代替や創出が人に与えや社会に与える影響は、技術や時代背景などにより様相が異なっており、今後、どのように対応していくかについてはその影響を冷静に見極める必要がある。

 

7. シンギュラリティ (技術的特異点)について

①「インテリジェント化が加速するICTの未来像に関する研究会報告書 2015 (平成27年6月)」(事務局:総務省情報通信研究所) ※当室作成

技術の進化によりコンピューターの能力が高まり、ある時点で人工知能がその自己学習能力により自らの能力をわずかでも自らより高めることができるようになると、人工知能の自己再生産による加速度的能力向上が起こり、未知の技術変化が始まると考えられる。Ray Kurzweilはこの時点(特異点)をシンギュラリティと呼び、2045年にシンギュラリティに到達するのではないかと予測した。

 

②「シンギュラリティと人工知能の将来」松原仁 (「情報処理」Vol.56 No.1、2015年1月)

シンギュラリティ後に現れるとされている「超知能」は、人間に対してバラ色の未来をもたらすかもしれないし、暗黒の未来をもたらすかもしれない(そのとき「超知能」は人知が及ばない存在となっているはずである)。しかし、「超知能」は突然生じるのではなく、連続的に進歩した結果のはずであり、それまでに人間と人工知能との境界、人工知能の責任の所在などについて、今からしっかりと議論しておく必要がある。

 

③「いかにしてシンギュラリティは訪れるのか」栗原聡 (人工知能30巻1号2015年1月)

意識を持つAIの登場により、AIの知能の向上は加速し、シンギュラリティは訪れると想像している。しかし、我々の生活がそれにより劇的に変化することはなく引き続き自由意思に従った生活が継続されているのだと思う。

 

④「人工知能に労働を奪われる日に備えよ」井上智洋 (エコノミスト、2014.10.7)

ロボットやAIの発達は「技術的失業」をもたらすかもしれない。シンギュラリティに至れば、AIとロボットが労働を行うので、労働者は賃金労働から解放されるが所得はなくなる。そのため、シンギュラリティへのソフトランディングとして「ベーシックインカム(固定額)」が不可欠になる。また、生産性向上に伴う消費需要喚起のための国民給付(変動BI)も必要となる。

 

⑤「AI、IoTは経済構造をどう変えるのか」柳川範之 (証券アナリストジャーナル、2016.12)

今、そして今後予想される技術革新の範囲を考えても、シンギュラリティを考慮する意義はない。AIによる業務の効率化や集約化をもたらすことはあっても仕事がなくなることはない。またIoTは情報取得が従来と異なることによりビジネスチャンスともなる。社会構造の変化としては、企業環境が大きく変わることがあげられる。

 

⑥「汎用的人工知能が技術的特異点を巻き起こす」山川宏、市瀬龍太郎、井上智洋(電子情報通信学会誌Vol.98, No3 2015)

(汎用AIの技術的進展と技術的特異点について概観し、それが個人にもたらす影響と、ソフトランディングのためのBIの議論を紹介したうえで)人類には、直面する多くの問題が存在するのであり、汎用AIはこれに広く貢献し得る。我々人類は、汎用AIと歩み寄り「共振化」を目指すべきであろう。

 

⑦人工知能は人間を超えるか? (「人工知能と人間社会に関する懇談会」報告書、平成29年3月24日)

現実の人工知能技術革新は全て設計者の意図どおりに動作するのみである。意図しなかった目的を自ら設定し、その達成に向けて合理的な動作をする可能性はゼロに近い。一方、そうした限界を打ち破り、汎用人工知能等が出現し、人類への脅威となる危険性も完全には否定できない。今後、議論を進めていくうえで重要となるのは、2つの対極的なポジションのバランスをいかに取るか、ではないだろうか。

 

⑧(同懇談会提出資料「人工知能と倫理」(人工知能学会・情報処理学会共同企画第3部)(人工知能Vol.31 No.5 2016年9月)