太陽光施設は窃盗団の「宝の山」、無人で防犯手薄…ケーブル盗急増で再エネ発展阻害の恐れ 2024/05/06

 送電用ケーブルの窃盗事件が急増している太陽光発電施設。各地の警察も摘発に力を入れるが、無人で防犯対策が薄い施設が多いうえ、目につきやすいソーラーパネルは、盗品を売却する窃盗団にとって「宝の山の目印」(捜査関係者)とされる。被害防止に向け、金属買い取り時の規制を強化する動きも出てきた。(水戸支局 竹田章紘、椿央樹)

半年で6回

切断された送電ケーブル(2022年12月、茨城県小美玉市で)=管理会社提供

切断された送電ケーブル(2022年12月、茨城県小美玉市で)=管理会社提供

 「まさかこんなに盗まれるとは思っていなかった」。茨城県小美玉市で、1・5ヘクタールの施設を管理する会社役員の男性は憤る。最初の被害は2022年12月。パネルにつながる銅製のケーブル約850メートル分(約550万円相当)が持ち去られた。再設置するたびに盗まれ、半年間で6回被害に遭った。

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 現在は人を感知すると警告するセンサーなどを設置。初期費用に約300万円、維持費も月数万円かかるが、被害は止まった。男性は「保険で被害額を穴埋めできたため、防犯がおろそかになっていた」と話す。

 茨城は売電事業者の比較的大きな施設の数が全国で2番目に多い。昨年の窃盗被害は前年の2・6倍に増えた。被害は群馬や栃木、千葉でも相次ぐ。

外国人グループ

 捜査関係者によると、狙われやすいのは、監視カメラがなかったり、警備会社との契約がなかったりする施設だ。複数人で車を近くに乗り付け、刃物で銅線を切り、荷台に載せて逃げていくケースが多い。

 読売新聞のまとめでは、昨年、施設から銅線を盗んだ容疑などで逮捕されたのは、関東で少なくとも計42人。日本人は3割で、6割がカンボジア人。ベトナム、タイ、ラオス、中国人もいた。不法滞在の外国人らがSNSで集まったとみられ、捜査関係者は「無数のグループが存在している」とみる。

 茨城県警が窃盗容疑で昨年夏までに逮捕した5人組のカンボジア人の男らは約80件の窃盗を繰り返したとされ、被害総額は2億7000万円に上った。警察庁は昨年12月、全国的な傾向を把握するため、太陽光発電施設の被害を詳細に集計するよう県警などに指示している。

保険にも影響

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 窃盗被害増加の影響は、損害保険業界にも及んでいる。太陽光発電施設の故障時の補償を主に見込んだ保険だが、窃盗被害に伴う支払いが急増。読売新聞の取材では、損保大手4社が盗難で支払った保険金は、21年度に約42億円だったが、22年度には約133億円に膨らんだ。23年度も上半期だけで約124億円に達している。

 損保業界には「受け取る保険料よりも支払いの方が多い赤字状態」という例もあり、保険料の値上げを検討する会社もある。

 被害の抑止には、盗んだ銅線の売却ルートを断つことも必要だ。茨城県や千葉県では、金属の買い取り業者に盗品を持ち込ませないよう、関連条例の改正・制定の動きも出ている。売り手の身分証明書や取引記録の保存などを義務付けることが柱で、年内の県議会への提案を目指している。

 太陽光発電協会(東京)の杉本完蔵シニアアドバイザーは、「被害が増え続ければ新規参入が滞り、日本の再生可能エネルギー発展にもブレーキがかかる。事業者側は防犯意識を持ち、警備態勢を整備する必要がある。国や業界、警察も一体となって対策強化を図るべきだ」と指摘する。

 

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