レスリング発祥の歴史
レスリングがオリンピック競技種目から除外される危機にあるようですね。
それに対して、レスリングは古い種目なので除外されるべきではないとの
意見が多く出されています。
確かにレスリングは古そうな競技という感じなのですが、
本当にそうなのかちょっぴり調べてみました。
最初に結論から言ってしまえば、本当に古いようです。
古代メソポタミア
レスリングが最初に文献に登場するのはギルガメシュ叙事詩で、
紀元前2600年の古代メソポタミアで
ギルガメシュとエンキドゥがレスリングで戦い合ったようです。
ギルガメシュはライオンや猛牛ともとレスリングで戦ったとされています。
古代エジプト
紀元前2400年頃のエジプトの
カーヌムホテップとニアンカーカーヌムの墓で
レスリングを描いた絵画が発見されたようです。
そして、ベニハッサン村の墳墓では
レスリングの技が描かれた絵画(↑写真)が発見されました。
絵を見てみると、まさにレスリングのようですね。
古代インド
古代インドでは、マハーバーラタ叙事詩に記述があり、
紀元前5世紀ころのアーリア人の侵入によって
メソポタミアのレスリングが在来の格闘技と融合して
クシュティー(kushti wrestling)に変化して現在に至っているようです。
古代ユダヤ
古代ユダヤでは、
神の祝福を受けるものとしてレスリングが捉えられていたようです。
聖書によれば、ヤコブは天使とレスリングを行い、勝利しました。
古代ギリシャ
古代ギリシャでは、イリアス・オデュッセイアにも記載があるように
レスリングは人気の競技でした。
紀元前700年に古代オリンピックの最初の正式競技となったのも
レスリングであったようです。
またトーナメントで最後まで勝ち上がったものが勝者というスタイルは
このとき誕生し、レスリングの勝者=最強の男だったようです。
ちなみに、ギリシャ神話のゼウスとクロノスの戦いも
レスリングと解釈されていますし、
ヘラクレスはレスリングのチャンピオンです。
古代ローマ
古代ローマではギリシャのレスリングを踏襲しながらも
残虐性を排除した競技としたそうです。
多くの文献が残っているようです。
中国では、シュアイジャオ(Shuai-jiao wrestling)という
レスリング系の格闘技が1世紀ころにすでにあったようです。
古代日本
中国のシュアイジャオの影響を受けて誕生し、
独自の発展を遂げたとされるのがたとされるのが、
垂仁天皇の時代に日本に登場した相撲(Sumo wrestling)です。
過去記事→[相撲のルーツ]
というわけで、レスリングという競技は
西洋から東洋にわたって、本当に古い時代に発祥したものと思われます。
日本が強いということは別に、
このような伝統ある競技がオリンピックから除外されるのは
残念なことであるかと思います。
ただし、レスリングのオリジナルな姿を見てみると、
そのルールには現在のような細かい規定がなかったのもまた事実で
どちらかと言えば、現在のプロレスのような競技であったように思われます。
もしも許されるなら、プロレスをオリンピック競技にしてもらって
じっくり楽しみたい気もします(笑)
最後に、オリンピック競技を人間の活動と関連して見ていくと
なんとなくそれぞれの立ち位置がわかってくるような気がします。
まず人間本来の動きという点で
走る:陸上競技
跳ぶ:陸上競技
泳ぐ:競泳・飛込競技
物体に対する運動という点で
持ち上げる:ウエイトリフティング
投げる:陸上競技
移動に関わる運動という点で
乗る:馬術・セーリング
漕ぐ:カヌー・ボート・自転車
戦闘行為という点で
抑える:レスリング
殴る:ボクシング
投げる:柔道
蹴る:テコンドー
武器を使った戦闘行為という点で
斬る:フェンシング
射る:アーチェリー
撃つ:射撃
人を魅了する行動という点で
見せる:体操競技
といったように、人間の基本的行動と
オリンピック競技とはよく対応しています。
また、これらの競技が複合したものが次の競技です。
見せる+投げる:新体操
見せる+跳ぶ:トランポリン
見せる+泳ぐ:シンクロナイズドスイミング
泳ぐ+乗る+走る:トライアスロン
撃つ+斬る+泳ぐ+乗る+走る:近代五種
さらに、球技として
蹴る:サッカー
投げる:ハンドボール・バスケットボール・水球
打つ:バレーボール・ビーチバレー
器具で打つ:テニス・バドミントン・ホッケー・卓球
などがあります。
IOCは競技を除外するというスタンスをとるよりは、
例えば、体操と新体操を組織として統合させることで
それぞれをサブカテゴリーとして共存させるなど、
他にも方法はあるかと思います。
なんとか知恵を絞って
レスリングを除外しない方向に進んでほしいと強く思うところです。