喫緊の課題が山積する中、今年も通常国会が開会し、野党による森友・加計問題を中心とする政権スキャンダルの追及が始まりました。この野党の主張をマスメディアが一方的に報道し、再び昨年と同じような非生産的な国会が再現されようとしています。国の政策を議論する国会の注目トピックがスキャンダルの追及であり、国会が野党とマスメディアのプレゼンスをアピールする舞台として利用されていることは、国民にとって極めて不幸なことと言えます。
そんな中、菅義偉官房長官会見における政権スキャンダルのヒステリックな追及で知られる東京新聞・望月衣塑子記者が自由党の森ゆうこ議員と共著で「追及力 権力の暴走を食い止める」という対談本を出版しました。本書の評価についてはあえて避けますが、上から目線で政府の倫理を批判するマスメディアの記者と野党議員のトホホな思考プロセスを把握する上では非常に興味深い書であると言えます(笑)。
官房長官会見で望月記者が行っていることは、一定の注目を集める政府とマスメディアの情報伝達の場を利用して、個人的な倫理観で政権を罵倒するものであり、ジャーナリズムをエクスキューズにして国民のための会見をジャックしています。ジャーナリズムが政権を論理的にチェックすることは、民主主義社会にとって不可欠な要求機能と言えますが、政権の追及自体を目的化する似非ジャーナリズムが政権を非論理的に悪魔化して信頼低下させることは、民主主義社会に不必要な政治の停滞をもたらすことに他なりません。この記事では、そんな望月記者の質問パターンに着目し、その不合理性を指摘したいと考えます。
過去における望月記者の質問を分析すると次の3つの類型に大別できます。
・不当な根拠に基づく質問
・不要な回答を求める質問
・政治的主張のための修辞的質問
以下、これらの基本パターンをそれぞれブレイクダウンして詳しく見ていきたいと思います。
1.不当な根拠に基づく質問
まず、東京新聞・望月衣塑子記者の質問に特徴的なこととして、政府を追及する論拠に客観性がほとんど保障されていないことを挙げることができます。事実であることが確かめられていない情報を官房長官に一方的に提示して、それに対する感想を強要するというダメモトの質問メソッドは、ジャーナリズムの公正性を逸脱したものであり、けっして「追及」には値しないものです。実際、誤謬という観点から見れば、彼女の論証方法は【個人的直感に訴える論証 appeal to intuition / truthiness】【個人的憶測に訴える論証 confident speculation】【個人的確信に訴える論証 personal assurance】【個人的先入観に訴える論証 apriority】【個人的懐疑に訴える論証 argument from personal incredulity】という個人の勝手な考えを根拠にするハチャメチャなものです。このパターンの質問は、主として(1)主観的憶測に基づく質問、(2)真偽不明情報に基づく質問、(3) 虚偽情報に基づく質問の3つに細分類することができます。
(1) 主観的憶測に基づく質問
望月記者は、しばしば客観性を伴わない個人的主観に基づき事態を勝手に憶測し、その憶測に対する菅官房長官の考えを聞く質問を行います。以下にいくつかの例を挙げます(Qは望月記者の質問、Aは菅官房長官の回答とします)。
Q:共有ホルダーの調査を行う必要がないことを文科省が判断したというよりも安倍総理・菅さん達が判断したと思うが、どうなのか。
A:ありえない。
Q:和泉補佐官が色々な形で動き回るのは、独自の判断というよりは菅氏や総理の意向を受けていると推察するが、どうなのか。
A:まったくない。
Q:報道では杉田副長官の留任という話が出ている。内閣の改造とともに杉田氏の留任と併せて和泉補佐官の留任、及びあれだけ叩かれた甘利氏の大臣就任という話も出ている。こういう骨格とする人々が代わらないということであれば大臣をいくら刷新しても何一つ安倍政権の体制を変えようという気はないのではないかという批判も出かねないと思うが、その点に関してどうか。
A:憶測による質問には答えない。
Q:概算要求で攻撃型ミサイルの研究開発費が計上されていることは、政府としてより攻撃型の装備を積極的に進めていく必要があると認識をしているのか。
A:そうした主観の下の質問に答えることは控える。
「~と思うが、どう思うか」という型式をとるこの質問パターンは、回答者が認めていない主張を前提に含めた曖昧な質問に回答させることによってその主張を回答者に自動的に肯定させるものであり、【多重質問/複合質問 complex question / loaded question / double-barreled question】と呼ばれます。すなわち、望月記者の「~と思うが」に対して、「どう思うか」を菅官房長官が回答した場合、菅官房長官は望月記者の「~と思うが」を自動的に認めることになります。
そんな中で、菅官房長官は、見事なまでに「~と思うが」の部分を否定し、絶対に「どう思うか」を言及しません。【多重質問】を寄せ付けない極めて論理的な対応であると言えます。
(2) 真偽不明情報に基づく質問
望月記者は、しばしば政府が悪徳な意図をもっていることを示唆する真偽不明の情報をまことしやかに述べて、その真偽を問います。
Q:前川氏によれば、審議会の人事に関して、官房長官が、政権批判する者については、人事を差し替えるように要望することがあると聞いている。
A:100%ない。そんな簡単なものではない。
Q:新国立競技場の建設にあたって和泉氏が現場を仕切っていた。和泉氏から隈氏を検証委員会の委員から外してくれと前川氏に要請が来た。前川氏は、最初から大成建設が選ばれ、隈研吾氏が指名されるということがあったから、和泉氏が隈氏を検証委員会の委員から外してほしいと言ってきたのではないかという話だった。いろんな場所に和泉氏の名前が文科省に限らずたくさん聞こえてくる。官僚の間では影の総理という噂を聞いている。想定していたからこういう発言が出たのかと思われるが、どうなのか。
A:事実関係が明らかでないことを憶測だとか、誰から聞いたとかで、この記者会見の場で質問するのには疑問を感じる。答えられるわけがない。少なくとも自身で質問する時には事実関係をしっかり取材してその上で発言をすべきではないか。
Q:私は証言者である前川氏から聞いた話をそのままあてているわけだ。和泉氏がどういう見解なのかはわからない。
A:文科省は莫大な建設費になって処理ができなくなったから専門家の和泉補佐官に依頼した。そこはひどすぎる。結果的にもよかった。工期も金額も少なくなってみんな納得している。
Q:再三こちらの取材の結果をぶつけているにも拘らず、推測に対して答える必要はないと回答するのはやめていただきたい。こちらは取材に基づいてこういう話を聞いたと。なぜ加計氏を呼べないのかという話も再三出ている。きっちり説明する気があるのであれば、どういう場を設けてどう安倍首相が対応するということなのか。具体的な道筋もないまま昨日のような発言をしたのか否か。具体的なものを言っていただきたい。
A:総理は自らの至らない点を認める中で丁寧に説明していきたいと申し上げているのではないか。
「~と聞いているが、どう思うか」という型式をとるこの質問パターンも【多重質問】であり、「どう思うか」について回答すると、自動的に「~と聞いている」という内容を認めることになります。
菅官房長官はこの質問パターンにおいても多重質問に誘導されることなく、真偽が確定していない事案に対してけっして答えません。「推測に対して答える必要はないと回答するのはやめていただきたい」と非論理的に逆ギレする望月記者とは違い、極めて論理的な対応です。客観的な証拠となり得ない「こちらは取材に基づいてこういう話を聞いた」とする単なる証言を根拠にして、発言に責任を伴う行政機関に見解を求めるのは極めてナイーヴです。
ただし、望月記者と同様に「政権は嘘をつく」と無条件反射で考えるような一部大衆は、たとえ官房長官が完全否定してもその真偽不明な情報を信じることになります。「悪は嘘をつく」と信じているからです。すなわち、会見において真偽不明の情報の真偽をダメモトで問う望月記者のメソッドは、政権を不合理に貶める効果がないとは言えません。望月記者は、官房長官がいくら注意してもこの質問パターンを繰り返すことから、望月記者は確信犯的にこの手の質問を用意している可能性があります。
ちなみに情報ソースはほとんどが同業他社の記事やワイドショー報道であり、仮にその情報が官房長官から否定されようと東京新聞の望月記者にとっては痛くも痒くもありません。そもそも情報の発信元を差し置いて望月記者が質問すること自体が不思議です(笑)
(3) 虚偽情報に基づく質問
望月記者は、しばしば完璧な虚偽情報にとびつき、ワイドショー情報を無批判に信じる情報弱者のように政権を批判します。
Q:フジテレビの報道で8月15日の日米電話会談のやりとりの一部が報道された。安倍総理の「北朝鮮との戦争は絶対にやめてほしい。有事になれば甚大な被害が及ぶ。」という話に対して、トランプ大統領が「現状では戦争する気はないが、核兵器・ICBMを放棄してもらいたい。嫌なら迷わず我慢しない。そのころには攻撃準備が整っているだろう」と詳細な内容が出たが、この点について政府の見解が聞きたい。
A:テレビの報道に答える場ではない。
Q:報道に出ていることが会見での質問に含まれることは問題か。
A:首脳間の電話会談が表に出ることはあり得ない。そうした報道に政府の立場として答えることはすべきではない。
Q:イヴァンカ基金に対しても57億円とかなりの金額が費やされるという話が出た。本来あてるべき国内の教育費の無償化に対する予算が削られてでもそういうものに出すと見受けられる。政府としては、無償化に財源を与える以上にイヴァンカ基金、防衛装備品のさらなる拡大が必要だという意見なのか。
A:事実に基づいて質問してほしい。イヴァンカ基金なんかない。サミットで世銀と各国が立ち上げた女性起業資金だ。各国と同じように拠出するだけだ。質問の趣旨が違う。
Q:11月に国連人権委員会の特別報告者のデイヴィッド・ケイ氏が官房長官や総務大臣と面会したいというときも政府側がドタキャンをしたという経緯があった。国際的に高く評価されている方々と政府の要職にある方々がきっちりと会って話をして世界にメッセージを発信していくということの必要性をどの程度真剣に考えているのか。
A:ドタキャンなんかしていない。事実に基づいて質問してほしい。
日米電話首脳会談をお見通しのワイドショーのトンデモ報道、イヴァンカ基金、デイヴィッド・ケイ氏に対するドタキャンなど、報道記者の常識を持ち合わせていなくとも、一般常識さえ持ち合わせていれば、質問に値しない情報であることは自明です。このようなナイーヴな人物が虚偽情報を基に官房長官に喰らいついている状況は日本国民にとって不幸であると言えるかと思います。
2.不要な回答を求める質問
ジャーナリズムの本来の目的を逸脱し、国民を混乱させる回答、国民にとって無意味な回答、国民に損失を与えかねない回答等を官房長官に求めるのも東京新聞・望月衣塑子記者の質問の特徴と言えます。このパターンの質問は、主として(1)仮定に基づく質問、(2)筋違いの質問、(3)悪魔の証明を求める質問、(4)秘匿事項に関する質問の4つに細分類することができます。
(1) 仮定に基づく質問
望月記者は、しばしば不確定な事象を仮定して質問します。「もし~したとしたら、どうするか」という型式をとるこの質問は、行政に将来予測をさせて不必要に社会を混乱させたり、行政のオプションを減らして特定の人物に不当に利益・損失を与えかねない回答を要求するものです。
Q:稲田大臣が説明を果たした上で辞任も含めた検討をするべきだという考えか
A:仮定のことについて話すべきでない。
Q:今後近畿財務局が報告した上であのような答弁をしていたとしたら非常な大問題となると思うが。
A:仮定のことについて答えることは控える。
Q:9条改正論議が国会で熟す前に先んじて敵基地攻撃能力の保有とも見られるような巡航ミサイルや護衛艦いずもの空母化も検討ということだ。9条改憲論議が煮詰まらない中で先んじて防衛装備の拡大だけが急ピッチに行われているという批判の声が野党からも出ているが、この点に関して政府としての意見は。
A:仮定の質問に対して答えることは控える。
国民に対して行政機関が最適なサービスを行うためには、ときの情勢に最適なオプションを選択するのが基本です。このため、国民の権利を保障することが目的の案件でない限り事前に裁量の選択肢を狭めることは不合理であり、不要不急の政府見解を事前に宣言することは国民の利益損失リスクを高めることになります。また、法治国家において行政は法に従って執行されるものであり、望月記者がしばしば質問するような立法を伴う仮定の話に対して官房長官が回答することは越権行為になってしまいます。望月記者のナイーブな質問ぶりは、「朝生」での某漫才師の発言といい勝負です。
(2) 筋違いの質問
望月記者は、しばしば答える立場にない官房長官に対して好き勝手な質問をします。これは望月記者が、民主主義における行政や立法の役割を理解していないためであると考えられます。担当大臣の案件、国会の案件、自民党の案件、米国の案件などについても臆することなく、官房長官に質問してしまいます。
Q:(自民党は)都議選の総括を都議選後にやるという話だったが、まだ出ていない。
A:政府として答えることではない。党でやる話だ。
Q:個人的に菅官房長官自身は加計幸太郎理事長がしっかりと説明した方がよいと考えているか。
A:私はこの場に個人的立場で立っているわけではない。
望月記者は、このような非常識の他に、国会で政府が既に答弁している内容を官房長官に再質問するという「国会軽視」の常習犯でもあります。
(3) 悪魔の証明を求める質問
望月記者は、しばしば典型的な【悪魔の証明 probatio diabolica】を政府に求めます。
Q:加計学園サイドへの取材で、ほとんど総理と理事長の間での飲食・ゴルフの代金は、加計理事長の方でもっているとの話をいくつか聞いた。本当に奢ったり奢られたりなのか、まったく饗応を受けていないということが証明できるのか。客観的証拠で立証できるようなものを長官は見た上で通常の交際なので問題はないと発言したのか否か。
A:総理が発言した通りだ。
Q:国民感情としては疑念を払拭できない。
「ないこと」の証明は不可能なので、事案の挙証責任は望月記者にあります。矛盾しているのは、「加計学園サイドへの取材で飲食・ゴルフの代金を加計理事長の方でもっているという話をいくつか聞いた」という望月記者が「あること」を証明できていない点です。論理的に考えれば、望月記者に対する疑念を払拭できません。
(4) 秘匿事項に関する質問
望月記者は、しばしば国益損失の回避や法律上の制約などで官房長官が答えることができない質問を投げかけ、官房長官が質問に答えないことを批判します。
Q:北朝鮮のミサイル発射について、前夜にある程度の状況を把握していたとなると、なぜそれを事前に国民に知らせていないのか。事前に通知することの方が国民の安心・安全を保つためには必要ではないか。
A:言葉の性質上答えることは控えるが、政府としては万全の体制で臨んでいる。こうした挑発行動を国連決議にも従わずに繰り返す無謀な国家があるのは事実だ。そうした中で私達は万全の体制をとっている。それに尽きる。
Q:公邸に泊まった日だけ次の日発射されている。今後政府が何も言わなくても首相動静を見て公邸に泊まると思ったら次の日はミサイルが跳ぶのかと。9月9日建国記念日にまた発射の情報が流れているが、今回もそのような情報が入れば公邸に前夜に泊まることになるのか。
A:政権として万全の態勢を整えて国民の安全安心を守ることが何か悪いことのような質問に聞こえたが。政府としては常日頃から冷静に国民の安全・安心を守ることに万全を尽くしている。それにすべてが尽きる。
敵に自分の戦略を事前に通告することは敵に有利なオプションを選択する機会を与えることに他なりません。日本の戦略を丸裸にすることなど、日本国民の安全に何の責任を取る必要もない望月記者にとっては何でもないことかもしれませんが、この質問は日本国民の安全を大きく脅かす重大な危険行為と言えます。仮にミサイル発射の前日に、政府が北朝鮮のミサイルに備えるよう国民に伝達すれば、北朝鮮はそれを日本の挑発的行為とみなしたり、ミサイルの発射時間や軌道をより過激に変えてくる可能性すらあります。このような質問をすること自体が北朝鮮を利することは間違いありません。このやり取りは、望月記者が国民の不利益よりも政権追及を優先していることを示唆するものと言えます。
ちなみに、望月記者は、しばしば警察で捜査中の事案に対しても官房長官のコメントを求めます。当然のことながら、仮に官房長官がコメントすればそれは行政の介入にあたり、捜査に影響を与える可能性がありますが、望月記者にはそんなことお構いなしのようです。その一方で官僚の忖度を問題視しているわけですから本末転倒と言うより他ありません(笑)。勿論、官房長官はこのような質問に対して一切回答しません。
3.政治的主張のための修辞的質問
もう一つ東京新聞・望月衣塑子記者の質問に特徴的なのは、ほとんどの質問が広義の【レトリカル・クエスチョン rhetorical question】であるということです。望月記者の質問の目的は、菅官房長官に事案の真偽を問うことではなく、質問を行うことで自らの政治的メッセージを情報受信者に示すことであるものと考えられます。このパターンの質問は、主として(1)レトリカル・クエスチョン(狭義)、(2)政治的要求、(3)繰り返し質問の3つに細分類することができます。
(1) レトリカル・クエスチョン
望月記者は、しばしば質問の形式をとった反語表現である【レトリカル・クエスチョン】を使って政治的主張を繰り返します。官房長官会見はインターネットを介して毎日動画で配信され、テレビのニュースでも頻繁に参照されます。すなわち、会見の質問者が【レトリカル・クエスチョン】を使えば、政治的プロパガンダを効率的に社会に拡散することが可能となります。
Q:都議選での秋葉原の声を有権者の疑惑解明に対してもっときっちり説明するべきだと言う声という受けとめは政府・安倍首相もしていないということか。
Q:「このような人には負けるわけにはいかない」という発言は、有権者を軽視している発言とも思える。発言自体に問題があると思わないか。
Q:秋葉原であれほどの歓声の中であのような声が出てくること自体、国民の政権に対する怒りの声だという受け止めは特にないという理解でよいか。
Q:二階幹事長は、都議選の前に(マスメディアに対して)「落とせるものなら落としてみろ」という強気の発言があり、その発言を含めて批判を浴びていた。まったく自民党として「反省してないじゃないか」ととられかねない。極めて重い発言だ。これについて問題がないという認識か。
これらの質問について、官房長官が額面通り質問に回答したとしてもほとんど意味はありません。望月記者が質問を終えた段階で既にプロパガンダとしての政治的主張は反語表現として成立しているからです。国民の負託を受けてもいない私人が、記者であるという特権を使って、あたかも国民の代弁者を装いながら公の場で堂々と政府批判を行っていると言えます。
(2) 政治的要求
望月記者は、しばしば質問という行為を逸脱して、レトリカル・クエスチョンを使うなどして官房長官に政治的要求を行っています。
Q:例えば菅官房長官が出会い系バーに行ってそこでどういう女の子たちがああいうバーに通い、その背景事情、教育の実態がどうなのかを聴くなどの対応をとることはないのか。こういうバーに実際に官房長官が足を運んでどういう実情が背景にあるのかを知ることが必要だと思う。
Q:文科省の共有ホルダーを第三者によって適切に調べてもらいたい。
Q:昭恵夫人の100万円の受け渡しについて、逮捕された籠池理事長は証人喚問という場できっちりと説明した。昭恵氏自身にもきっちりと説明する必要があると思うが。
Q:総理の口から、加計理事長との関係に問題がないというのであれば、その根拠となるものもさし示しながら説明していただきたいが、明日は期待できると考えてよいか。
A:この会見場は貴方の要望に応える場所ではない。事実に基づく質問に答える場所だ。
Q:金正恩委員長は、北朝鮮の基地を叩いたり、金委員長の斬首計画を行ったり、レイダーに映る飛行はしないよう再三にわたって米国に求めている。このようなことを米韓合同演習を続けていることが、金委員長のICBM発射ということを促していると言える。米国側・韓国側との対話の中で、合同演習の内容をある程度金委員長側の要求に応えるよう冷静になって対応するようにとの働きかけを日本政府はやっているのか。
A:我が国は対話と圧力、行動対行動の基本姿勢の下に日米の強力な同盟の中で国民の安全を守りきっていく万全の体制に取り組んでいる。その内容については、北朝鮮の委員長に聞かれたらどうか。
望月記者は、金正恩の要求に応えるよう日本政府が米韓に働きかけているのかを疑問文で聞いています。望月記者はこの疑問文を「質問」と主張していますが[記事]、これは明らかな詭弁です。このような極めて具体性に富んだ仮定条件と限定された対応内容を含んだ文言の最後の部分だけが不自然な疑問形になっている構文を、普通の国語能力を持った人が聞けば、それを「要求」と解釈するのが普通です。そもそも、あのヒステリックな大声で官房長官を威圧するように疑問文を提示すれば、ほとんどの人はそれを【レトリカル・クエスチョン】による「要求」と解釈するものと考えられます。
(3) 繰り返し質問
望月記者は、しばしば同じ質問を何度も繰り返します。
Q:本当に文書がないのか、第三者による調査をやるべきだ。
A:今の質問はこの場で何回したのか。何回も何回も繰り返されている。自分自身が納得できないからと言って説明していないと断じることはいかがかと思う。担当大臣が委員会で説明していることに尽きる。
Q:何回も聞いているのは何回聞いても同じ回答しか出てなくて、その結果私だけではなく、国民の世論調査で説明責任を果たしていないという数字が出ている。都議選の結果を含めて重くとらえないといけない。答弁の内容が納得できないという結果が都議選の惨敗に繋がっていると各紙の分析から見える。そのことに対する認識があまりにも弱い。貴方が思っているからではないかではない。この世論調査の結果を以下に真摯に受け止められるか。そこを政府としてどう考えているのか。
A:同じ答えだ。
繰り返し質問には、質問に含まれるメッセージを情報受信者に深く記銘させる効果と、官房長官が望月記者の質問に答えない印象を造る効果があります。今では虚しい「小池劇場」はメディアが主導して造ったものですが、それが最高潮に達した都議選後に、望月記者のヒステリックな声も最大のヴォルテージに達したと言えます。
思考停止のルサンチマン
記者会見に参加している記者が、国民の負託を受けた代弁者であるかのように振る舞い、実際に国民の負託を受けている政権を完全否定するのは極めて理不尽な構図であると言えます。望月記者の大きな勘違いは、2017年7月の都議選後に投げかけられた次の【レトリカル・クエスチョン】に象徴されます。
Q:メディアからの政府に対する批判の声というのは、国民の声を代弁していると思わないのか。
望月記者は、メディアは国民の声を代弁する存在であり、政府を糺す社会的ミッションを持っていると理解しているものと考えられます。しかしながら、論理的に見れば、国民から実際の負託を受けているのは現在の政府であり、望月記者は国民から何の負託も受けていないメディアという単なる特権階級の一従業員であるに過ぎません。
ニーチェは、権力者は悪の存在であり、権力者に対峙する者は善の存在であると勝手に断定することで道徳的に優位に立って権力者を不合理に見下す【畜群 herd instinct】という本能が人間に存在することを指摘しています。この【畜群】の原動力となる妬み・憤慨の感情は【ルサンチマン ressentiment】と言い、この感情に基づく価値判断の規範を【奴隷道徳 slave morality】と言います。
望月記者が普段から口にしている「このままではどんどん日本が危ない国家になっていく。ここで何とか私達が止めなくてはいけない」という思考停止のステレオタイプの【畜群】本能こそが、官房長官会見で【奴隷道徳】を振りかざした不当質問を行うモティヴェイションになっていて、もっぱらヒステリックな言動は【ルサンチマン】が顕在化したものであると推察されます。
残念ながら、望月記者と親和的な日本の革新勢力(朝日新聞・毎日新聞・TBSテレビ・テレビ朝日・立憲民主党・共産党・社民党・自由党等)には、この【奴隷道徳】が蔓延しており、【ルサンチマン】を毎日発揮しては政権批判を繰り返しています。すなわち、強い【憤慨 re-sentiment】の感情を前面に出して相手の【倫理】を批判することで、政権側に悪、反政権側に善を割り当てた構図を造り、「悪の言う事は偽であり、善の言う事は真である」という【信仰 belief】を原理として【人格論証 ad hominem】を行い続けています。【多様性】を主張しながらも実際には自論以外を一切認めず論敵を悪魔化する偏狭なイデオロギーが強固な【ノイジー・マイノリティ loud minority】を形成して日本社会の生産性を大きく低下させています。彼ら彼女らは反論されると、それを邪悪な意図に基づく言論弾圧と認定してより結束力を高めます。これは【カルト cult】の行動パターンと類似しています。
そもそも物事の【真・偽 true/false】は関係者の【善・悪 good/evil】とは無関係です。物事の追及に必要なのは真・偽を見極める【論理】であり、個人の価値観に基づき善・悪を割り当てる【倫理】ではありません。望月記者のようにヒステリックで恫喝的な大声を浴びせて関係者の【倫理】を問う必要はまったくないわけです。逆に菅官房長官を罵倒する望月記者の極めて攻撃的な口調は望月記者の「追及力」の低さを露呈していると言えます。
私達国民にとって重要なのは、論理を欠いた扇動者の扇動パターンを共通の知識とすることで、けっして騙されないことです。