第1位
「ちょっと思い出しただけ」
2年連続で邦画が1位になりました。
今年は昨年よりもガッツリな恋愛映画。
世間では「花束みたいな恋をした」と比較される事が多いですが自分は圧倒的にこちらの方が好きでした。
ある2人の別れている状態から出会いに時間を遡っていきます。
その遡り方が年が変わっていきますが日にちは変わらず映し出さられるのが7月26日。
6年間の7月26日を描いている映画です。
明確に何年の7月26日と提示されませんが一応年が切り替わる時に時計が映っていたと思うのでそこで、あっ、前の場面の1年前か、という感じで観ている方が補完していきます。
昨今の何でも台詞等で説明する感じが嫌いなので、こういうこちらが考えたり気付いたりさせる作りは楽しいです。
先に挙げた時計以外にも画面の中の様子や映されるアイテムで時間が戻ったんだなってわかるのも素晴らしい。
主演の2人、池松壮亮さん、伊藤沙莉さんも凄く自然な感じで良かったですが、また脇を固める面々も最高で國村さんや成田さんは勿論、やはり永瀬正敏さん絡みのシーンが堪らなく痺れました。
この作品、クリープハイプというバンドの「ナイトオンザプラネット」という曲にインスパイアされ作った映画。その曲はジム•ジャームッシュという監督が撮った「ナイトオンザプラネット」という映画にインスパイアされて作ったもの。その監督の作品に何度か出演している永瀬さん。
こんな繋がりも知っているとニヤリとさせられます。
劇中、主演の2人には特別ドラマチックな事は起きません。
付き合っていた2人が何があって別れ、どんな楽しそうな7月26日を過ごし、どんな感じで付き合い始めたのか、そして現在…。
そんな描かれ方ですが、唯一この永瀬さんが劇中時間を巻き戻すという作りの為に物凄くドラマチックな出来事が起きているように映されます。
この作りは素晴らしかったです。
本作は2人の恋愛模様を描いていますが、現在が映し出された時に今の2人の状況が描かれます。
ちょっとだけ今の2人がクロスするんですが、ただそれで本当に昔を「ちょっと思い出しただけ」で何かが起きる訳ではないんです。
懐かしんで、思い出して、そして先に進んでいく…。
特別じゃない日常のちょっとの時間の誰にでもあるような思い出すという事を描いています。
それが観ている側と地続きな感じがして、ラストのカットも素晴らしい余韻を感じさせてくれました。
恋愛に限らず、誰にでもあるような自分の中に置いてある忘れ難い思い出。
そんな事を観た後に「ちょっと思い出したくなる」素敵な作品です。