12月にはいり、池に鴨が戻ってきた。
今年の冬は暖かく、気候がおかしいだ
けでなく、世の中も妙に変だ。
この世には、なにごとも表と裏がある、
という。寒くなり、ベッドから離れが
たく、夢をみることが多くなってしま
った。
浮き世の世界を描いた絵を浮世絵とい
い、なかでも傘にちなむ枕絵は、ひと
のこころを癒してくれる。
浮き世（陰と陽）
浮き世（この世）には表と裏があるよ
うにものには陰と陽がある。
地名にも山陰、山陽と使われているし、
文字にも、陰の字は淫、隠と当て字で
書かれたりする。
例えば浮世絵でみてみる。
溪斎英泉の枕絵(傘）
浮世絵師溪斎英泉の隠語は淫乱亭
である。
溪斎英泉の艶本の扉の絵には、傘
をもった女性がいる。
彼女は、蝶の模様の着物を身に着
け、しだれ桜を背景にして立って
いる。
扉絵「桜隠し」（蝶の紋の雨傘の女）
この季節に、雪で桜がしだれ、蝶が舞
っている。
これは、咲く満開の桜が雪で隠れて見
えない様子をいい、この隠を艶本の淫
に懸けて、艶本の物語の枕絵の序（扉
絵）にしている。
小紋の着物の雨傘の町女房（溪斎英泉画）
恋川笑山
恋川笑山（1821-1907）は常陸
国高山の生まれ。
浅草の日輪寺に入る。その後安政
元年から戯作者柳下亭種員の門に
入り、種清と名乗る。
上演された芝居をもとにした草双
紙（合巻）で人気を得る。
また、淫水亭の名で多くの枕絵（
春本）を書く。
恋川笑山の傘にちなむ艶本の枕絵。
雨の夜
雨の夜をしのびてひとにもらさじと
しめし合わせて濡れるうれしさ
「春閨御伽文庫」（画）
女
内へ帰るとできないから、ここでたん
としておくれよ。
もう〱なぜこんなにお前が可愛いのだ
ろう。
あれさ、もうよくなってきたァね。
男
こんな中で致しましても、中へすっぽ
り入りますかしらん。
こういうことは、なんだか窮屈にする
ほどよいようでございます。
（傘の文字：蛸、ふかず三番）
夜の雨
女
たいそう降ってきたじゃァないか。
お前のもののように世ほど大ぶりだよ。
だけど、こんなところで人に見られた
らどうしょうのう。
男
なあに、江戸っ子の腹は広小路だ。
人の恋路を邪魔するような、尻の穴の
狭え野夫天が、箱根からこっちにいる
ものか。
春情浅草名所（恋川笑山画）
Enjoy夢の傘（浮世枕絵）
雨の夜。手描き友禅で、透けた花模様
のある傘に、同じ花模様の絵を描いて
みた。
昨晩、ベッドに這いって来た彼女
の最後の一枚の黒の下着をずらし
てゆく。
雪のような真っ白い肌が、しだい
に薄いピンク色に染まり、すでに、
そこの奥は濡れていた。
傘の裏（花模様）
性依存症荘のぼく。
この治療に当たってくれている姉妹
がいる。
ふたりとも医師で、どうもどちらか
が、黒色の下着だった。
そこで、傘の表にではなく、傘の裏
に花模様の色を替えて、描くことに
した。
傘の表（模様）
昨夜、回診に来たかの女に起こされ、
朝方にベッドから起き、その後一緒
に鴨が泳ぐ池の周りを彼女と散策し
た。
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