眠れぬ暑さがつづく。

浮き世に蕾が開く色の花。

庶民が愛した秘かに愛した艶本。

 

夢のなかでの夢のような景色。

江戸の美人画で知られた喜多川歌麿。

歌麿の短編集「ひたち帯」のなかの

書き入れのある3つの睦みの絵。

 

願と釘

 

 

お前の釘よりおれの釘のほうがよくきく。

新発意(ぼち)より新ぼぼがいい

願がきくように、ずいぶん釘をうつののだ

 

男と若衆

 

 

これはありがたい。

さようならば出家いたしましょう

若衆

どうぞ、あれを狐だとおもわねばよいが

そうも思うまい。馬だと思おう

やれ〱ありがたい

若衆

さどうぞ早く殺してくんなよ、さあ〱

 

 

鬼と供養

 

 

鬼の来ぬうち、お前の洗濯をしてあげよう。

あれ、そんなこと…。早くしておくれ

この児たちはとんだこと始めたわ。

なむあみだ なむあみだ。

念仏に合わせてかきあげよう。

ひとかきかけば供養(せんずり)くようだ。

 

喜多川歌麿(ひたち帯「睦み」)

「ひたち帯」は歌麿の4つの物語から

なる短編集。絵も文も端麗でその艶本の

序文。

 

 

喜多川歌麿「ひたち帯」(序文)

 

天に牽牛、織女の契星あり、地に高砂、

相生の松、夫婦の語らいあり、人とし

て男女の睦(むつ)みほど楽しみなも

のがあろうかと、ひとり理屈を夕時か

らとりかけるとの噂は嘘ではない。

本屋の何某、図工に請い求めた曲取の

名図を混じえて、四方の好き人の供覧に

提せんと、御見男女姿(おみなめし)と

名づけるものである。

昼も夜もとりの年

         佐久世名斎題

 

 

 

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