江戸時代に幕府公認の遊郭が三つあり。

京都島原、江戸吉原そして大坂新町の

遊郭。

新町の遊郭地には旧くから俳人千代女の

だまされて来て誠なり はつ桜 千代女

この句碑と松尾芭蕉鶴の句碑が残されていた。

春の夜は 桜にあけて しまいけり 芭蕉

当時からよく知られていた大坂新町の遊郭。

 

ー大阪新町遊郭ー

日本三大遊郭のひとつ大阪新町廓。

 

 

大阪新町夕陽廓の賑(下:西、上:東)

 

大坂新町は難波の四ツ橋を北に渡り、

新町橋を渡ると新町遊郭の大門に入る。

 

 

浪花の湯里「新町廓の賑(にぎわい)」

 

新町遊郭西側の北端隣には秀吉の頃に大坂

城築城の祭の材木置き場があり、九軒町の

筋には、揚屋で有名な吉田屋があった。

 

 

九軒町夜桜の太夫道中図(松川半山)に千代女の句碑 

 

 

ー井原西鶴と大阪新町遊郭ー

大坂新町は寛永8(1631)年に、これま

で道頓堀のところにあった遊郭をこの地

に移した。このときに近郊の各町の遊所を

一箇所に集められた場所が新町という総称

した地名で新町廓には各町すじがある。

 

 

「浪華名所独案内」(天保3・1832年)

 

井原西鶴(1642-1693)の頃の新町

遊郭は、遊郭のなかでも日本で最も広い

遊郭で、35軒程度が営業し、遊女は太夫

、天神、かこい、以下端女郎がいた。

 

茶屋は30軒程度で、西鶴は、「好色一代

男」(巻六)で新町遊郭を舞台に、「全

盛歌(ぜんせいか)書羽織(しょばおり)

」を題にして、新町の太夫・野秋を描く。

 

ー井原西鶴「全盛歌書羽織」

(太夫・野秋)ー

主人公の世之介42歳のとき。

客は本奥縞の流行姿。女郎の衣装も洒落

(しゃれ)で墨絵で源氏絵巻を描かせ、

紋所も比翼に並べ、袖口も黒く、裾も山

道形にとるぞかしに始まる。

 

世之介は、尾張の豪商・伝七と新町廓の

太夫・野秋をめぐって、粋な衣装をする

などし、競い合い、物語は展開する。

 

ところで野秋はというと。

初雪の日、誓紙も「おふたりだけに」と。

新町の紋日(涅槃会)には、「からだが

ふたつ欲しい」と。

尾張の豪商と世之介の大尽への気遣いが

格別だった

 

3月2日から3日間の桃の節句の紋日に珍

しく世之介と伝七が出逢うことになる。

結果、野秋を中に三人枕を並べて寝た。

同じ枕を並べながら下碑て首尾(情交)

するわけなく、洒落たことばかり、前代

未聞の女郎買いであった。という。

 

ー大坂新町の野秋ー

ところで、評判の野秋にいて付け加えて

西鶴が云う。そのほかに寝て見なければ

二つあるという。

 

あはねば知れぬよき事ふたつあり。

生まれつきの仕合せ、帯解けば肌うるは

しく暖かにして、鼻息高くゆひ髪乱るる

ををしまず、枕はいつとなく外になりて、

目つきかすかに青み入り、左右の脇の下

うるほひ、寝まき汗にしたし、腰はたた

みをはなれ、足の指先かがみて、よろづ

につけてわざとならぬはたらき、人の好

くべき第一なり。

 

そのうえにまだおかしきは、折々泣く声

が鵺(ぬえ)に似て、蚊帳(かや)の吊

手とともに、男が落ち入るところ(女陰)

を、九度までとつてしめ、その好(すき)、

いかなる強蔵(精力絶倫)も乱れ姿にな

って、短夜の名残(なごり)、灯りをと

もにし、美しき顔をみるに、絵に書きし

虞子君(中国の代表美人)は物いはず、

「さらばや」といふその物ごし、あれ

(あのときの泣き声)はどこから出る声

ぞかし、「親はー」と尋ねければ、都の

たつみ朝日山(宇治)の近き里となり、

さてこそ、御茶のようというもむかし。

 

西鶴は、挿絵を描く。

情交が終わったあと。太夫おつきの禿

(かむろ)は団扇で世之介に風を送り、

世之介は蚊帳の中から半身乗りだし、煙

管(きせる)をもち、太夫にはなしかけ

襟に頬をうめて、恥じらう太夫の野秋。

 

 

井原西鶴「好色一代男」の野秋(挿絵西鶴、1682年発行)

 

現在、新町廓跡地(新町北公園)には揚

屋吉田屋の九軒町に千代女の句碑(西端)

があり、東端にあった松尾芭蕉の句碑は

残っていない。

新町廓を舞台にした井原西鶴「好色一代

男」の世之介の太夫・野秋との艶噺。

 

 

2023.4.8

新町廓「夕霧太夫(井原西鶴)」ー男と女の物語(383)

2023.4.9

新町廓(近松門左衛門「夕霧阿波の鳴門」)ー男と女の物語(385)

2023.4.10

Enjoy花有樹「八重桜」(71)ー男と女の物語(386)

2023.4.11

加賀千代女「だまされて(新町廓)」ー男と女の物語(387)

2023.4.12

Enjoy花有樹「桜吹雪」(72)ー男と女の物語(388)

2023.4.13

Enjoy花有樹「好色一代男(文机)」(73)ー男と女の物語(389)

2023.4.14

Enjoy花有樹「諸艶大鑑(花競べ)」(74)男と女の物語(390)

2023.4.15

江戸吉原(三都物語①)ー男と女の物語(391)

2023.4.16

京都島原(三都物語②)ー男と女の物語(392)