女性が眼を閉じるとき。

愛の抱擁のなかで接吻されるかの女は、

彼にその身を捧げ眼を閉じている。

 

 

「The Kiss」(オーストリアのクリムトの作)

 

<装飾画>

クリムト(1862-1918)はオーストリア帝国のバウム

ガルテンで誕生、父はボヘミア出身の金銀細工師で、

1876年に博物館付属工芸学校に入学(14歳)、工芸

学校では、模写を中心とした古典主義的な教育を受

けた。卒業後、弟と友人の3人で芸術商会を設立し、

国立劇場(現チェコスロバキア)の装飾を担当後、引

き続き、1890年からウイーンの美術史美術館大階段

室の天井画の依頼がある。アーチ両側の壁面、ティン

パヌムと柱間部分で、クリムトは美術史上の重要な時

代を表す11体の寓意像を描く。壁に(横向きの総督)、

(タナグラの少女)、(パラス・アテナ)の絵を描く。依頼

者の知性の勝利を謳いあげるテーマに反し、これを否

定する寓意であったために大論争となる。クリムトは、

当時の画壇の写実的な傾向に反対し、仲間と分離派

を結成する。

 

 

ウイーン美術史美術館の装飾画(クリムト初期の装飾作品1890-91年)

 

クリムトの大胆な新様式は多くの反発があった。

文部省の依頼を受け、ウイーン大学講堂を飾るた

めに制作した(哲学)、(医学)、(法学)の寓意画は、

その裸体表現が激しい非難をよび、政治問題にま

で発展する。結局クリムトは、製作費を返還して作品

を買戻し、改めて手を加えて完成させたが、この三部

作はのちにナチスによって没収され、1945年に親衛隊

が撤退するときに他の作品と同じく焼失する。作品は

白黒写真で残る。

 

 

クリムト「法学」

<「The Kiss」(GustavKlimt)>

「接吻」(グスタフ・クリムトの作)。

グスタフ・クリムト(1862-1918)の「接吻」は

金色のマントに包まれた愛の姿を描いている。

薄暗闇の金色を背景に、島のように浮かぶ緑

の草原に色とりどりの花が咲く。女は男に接吻

され、眼を閉じ、いろいろな形の装飾のある金

色のマントは、ふたりを人目から隔ているが、し

なやかにうねる花で色彩られたかの女のからだ

の輪郭があり、腕、手先、足首、足先の肌の部

分がはみ出し、その顔は恍惚で。かの女は金色

の夢に慕っている。

 

 

「The Kiss(接吻)」(GustavKlimt1908年作)

 

クリムトは、同時代の多くの芸術家と同じく、日本の

文化の影響を受け、1900年にクリムトが結成した分

離派は、1900年にウイーンでジャポニズム展を開催

する。クリムトの作品には、金箔をもちいた日本の琳

派や、特に浮世絵の影響を受け、伝統的様式にかわ

り、モデルの大胆なポーズがあり、細部の表現が加わ

る、浮世絵の新しい象徴的な表現方法などをみる。

 

 

2021.8.21

竹久夢二(お島「宵待草」)ー男と女の物語(166)