鈴木春信は多様な色彩の錦絵の

創始者で、次世代の浮世絵師に、

歌麿、北斎にも影響を与える。

鈴木春信の春画に「風流座敷八

景」がある。

 

「風流 座敷八景」

「風流 座敷八景」には、八景

の座敷があり、それぞれの座敷

には和歌が添えられている。

絵とあわせ和歌で、風流な座敷

の趣きを覗き見できる。

 

(第一図)

「琴柱落雁(ことじのらくがん)

 

 

琴をひく座敷で女性と男性が、

たがいに情をたしかめている。

これに目をそらす黒犬、そして

画中に和歌がある。

琴の音に ひきとどめけん

初雁(かり)の

あまつそらより つれて落ちくる   

 

(第四図)

「塗桶暮雪(ぬりおけのぼせつ)

 

 

 

綿摘みをする綿摘女、座敷で自ら

の麓に男をさそいいれている。

富士の山 ふもとハくらき

夕暮れの 

空さりげなき(起) 雪を見るかな

 

(第六図)

「時計晩鐘」

 

 

 

晩鐘の頃の座敷での男女とその

様子を覗き見する女性。

ひまもなく 時をはかりの 

か年(鐘)乃(の)こえ(声)

きくにひさしき 夕まくれかな

 

(第八図)

手拭掛帰帆(てぬぐいかけのきはん)

 

 

男と女が愛し合う座敷の場面を

鏡面とあわせて見る。

帰帆かけて うら(浦)により来る

舟なれや

い(入)るとハ見へて いつ(出)

るとハなし

 

鈴木春信と浮世絵春画

「風流 座敷八景」は、明和6(1

769)年の鈴木春信(1725-177

0)の作。

これまで数字だけの暦を、春信が

暦に絵を添えたのが「座敷八景」。

錦絵「座敷八景」を原本にし、趣

向、図柄を変えたのが「風流 座敷

八景」になる。

 

美人画の題材に和歌、謡曲などの

古典を題材にした、春信の頃。

江戸の版本は、文が主で、画は従

だったが、春画「風流 座敷八景

」にみるように、画に重きをおき、

和歌などを添えている。

これが先駆けとなり、その後寛政

期に、歌麿や北斎の春画では、文

はなくなるか、あっても詞書、書

入れに留まり、画本(絵本、笑本、

艶本)になっていく。

 

 

 

2019.9.9

鈴木春信と春画(「風流」)ー男と女の物語(28)

 

 

2020.6.15

北斎の娘・応為の春画「絵本 つひの雛形」ー男と女の物語(38)